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第9話 カモネギ

人気のない袋小路で少年を下ろす。


「よくよく考えて、これって傍から見たら完全に誘拐だよな……」


まあ細かい事は気にしない。

取り敢えず、気を失っている少年の状態を確認をする。


「あちゃー、こりゃ折れてるな」


右上腕のあたりが青黒く変色しており、どう見ても骨が折れている状態だった。


まあ小さな子供が、大人に棒でぶん殴られたらそうなるよな。

しかもあの商店のおっさん、更に殴ろうとしてたからな。

まったく、メゲズは恐ろしい所だぜ。


「どれ、治してやるか」


悪役の山賊の癖に回復魔法を使えるのか?

もちろん使えるさ。

山賊家業に怪我は付き物だからな。


合理的な人間だったゲリュオンは、その手の必要と思われる技能を一通り網羅していた。

俺は早速呪文を詠唱し、光属性の回復魔法を少年の腕にかけてやる。


「シャインヒール」


かけたのは低位の魔法だが、森羅万象の才能を持つゲリュオンは魔力も出鱈目だ。

その高魔力で扱われる回復魔法は、あっという間に少年の腕を完治させてしまう。


「おお!こいつは美味いぞ」


カルマ値を確認すると、マイナス637になっていた。

助けて回復しただけで20も増えるとか美味しすぎ。


「う……」


程なくして少年が意識を取り戻す。


「よう、気が付いたか?」


「――っ!?」


俺が声をかけると彼は跳ね起き、壁際に張り付いた。

どうやら脅かしてしまった様だ


「だ……誰だお前……」


「んー、命の恩人かな。お前、あのままじゃあのおっさんに殴り殺されてたぜ」


「おっさん……あ、そうだ!パン!」


少年が両手を見た後、慌てて辺りを見渡して盗んだパンを探す。

パンはさっきの所に放置して来ているので、当然ここにはない訳だが。


おっさんに殺されそうになった事より、パンの方に反応するのかよ……


「ない。ない。そんな……」


少年は今にも泣きそうな顔だ。

浮浪児が腹をすかせての行動というにしては、どうもおかしい。

それが気になったので、俺は聞いてみた。


「何か事情がありそうだな。話してくれれば、力になってやれるかもしれないぞ?」


「……」


が、少年は警戒した様な目で俺を見るだけで口を紡ぐ。


「そう言えば自己紹介がまだだったな。俺はタロウ・ヤマダ。人助けが趣味の、お人好しだ。名前を聞かせてくれないか」


俺は笑顔でそう語りかけるが、やはり少年はだんまりのままだ。

普段なら、余計なおせっかいはこの辺りで諦めてるころだ。

何せ相手が求めてないんだからな。


だが俺は諦めない。

何故なら――


彼からは、カルマ値の美味しい香りがするからだ。

逃がしてなる物か。


「まあ自己紹介はいいとして……事情は話してくれてもいいんじゃないか?言った所で何か失う訳でも無し。困ってるなら、一か八かで俺にかけても損はないだろ?」


「……………………妹が、病気なんだ」


少しの沈黙の後、少年がやっと口を開いた。


「……」


妹の病気とパンに、一体何の繋がりが?


この世界のパンに病気を治す効果などないので、全く関係ないワードもいい所である。

だが俺は余計な口は挟まず、黙って少年が続きを口にするのを待った。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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