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第8話 メゲズ

メゲズは治安の悪い小規模な街だ。

この街を実質的に支配しているのはゲヘンと言う闇組織で、この街では盗品や違法薬物の販売などが盛んにおこなわれている。


ゲヘンが小さな街とはいえ掌握できているのは、都市長が金に目のない男だからだ。

要は大量の賄賂を受け取って、闇組織に好き放題やらせているという訳である。


「糞みたいな話ではあるが、そのお陰で俺も色々と手に入れられるからな」


俺は街に入る正門を避け、小さな裏門へと向かう。

正門には警備兵が立っており、そのまま向かえば、指名手配犯である俺は確実に揉める事になるだろう。

だが裏門はゲヘンの構成員が固めており、金さえ渡せば犯罪者でも問題なく中に入れる事が出来た。


ま、結構高くつくけどな。


「これでいいか」


俺は指定された結構な額を、見るからにガラの悪そうな構成員に手渡す。


俺の所持している金は、ゲリュオンが人から奪った物だ。

それも殺して。


それを使うのは、正直ためらいがない訳ではない。

とは言え、俺が生き延びるのにはどうしても金は入用になる。

もしこれを使わなかったなら、買い物はおろか、メゲズにすら入る事すら出来なかっただろう。


だから悪いとは思いつつも、金は使わせて貰う。

一応、馬鹿な事や犯罪関係には使わない事を誓いつつ。


「この札を首からかけて置けば、指名手配犯でもこの街じゃ捕まる事はない。ただし、問題を起こした場合は別だぜ。肝に命じときな」


外での犯罪はスルーして貰えるが、街中で起こした物に限ってはそう言う訳に行かない。

そう警告される。

それは言われるまでもなく分かっている事だし、犯罪を犯す気は更々ないので問題ない。


「ああ、わかった」


俺は受け取った札を首から下げ、裏門から中へと入る。

想像通り、街中は柄の悪い奴が多い。


余計なトラブルには巻き込まれないよう、俺はハイパーステルスを発動させておく。

まあ近くなら目視されてしまうのであんまり意味はない気もするが、一応念のためだ。


え?

組織からの脅しがあるんだから、好んで犯罪を犯す奴らはいないんじゃないか?


そんなわきゃない。

もちろん多少のブレーキにはなるだろうが、所詮は犯罪者だ。

カッとなって暴れたり、バレなきゃどうって事ないって考えるずる賢い奴らが大半である。


それに、ゲヘナの構成員もその大半はチンピラみたいなもんだ。

外部から来た奴らは大丈夫でも、組織の奴が何かわるさしてこないとも限らないからな。

用心するに越した事はないだろう。


「食い物とかも高いのかよ……」


露店にある食料の値段を見て、俺は渋い顔をした。

ゲーム内では、この街だと装備や回復アイテムを購入する際5割増しの価格が請求される。

それ自体は当然知っていたが、まさか全商品共通の仕様だったとは。


「てめぇ、このクソガキ!!」


野太い声に振り返ると、小汚い恰好をした子供が吹き飛ぶ姿が目に入って来る。

声を上げたと思われるゴツイ男は手に棒を握っており、どうやらそれで子供を殴り飛ばした様だ。


「盗み……か」


路上に転がる子供の手から、大量のパンが散らばっている。

どうやらパンを盗もうとして、見つかってしまった様だ。


「うちから盗もうなんざ、舐めんなよ!!」


怒りに興奮しているのか、男が倒れている子供に棒を更に振り上げた。

まだ殴るつもりの様だ。

その様子をみて、俺は瞬間的にチャンスだと判断する。


何の?


当然、人助け――そう、カルマ値を稼ぐチャンスである。


盗人とは言え、子供だからな。

男の行動は明らかにやり過ぎとしか言いようが無い


「おい、よせ」


俺は素早く近づき、振り上げられた棒を握ってその行動を止める。


「テメェ!何のつもりだ!!」


「相手は子供だ。盗まれた分は俺が払ってやるから、見逃してやれ」


「さてはテメェ!このガキとグルだな!!」


頭に血が上っているとは言え、酷い言いがかりである。

なるべく問題は起こしたくないので、話し合いと金で解決したいのだが……


「あ、やべ」


「ぐぇっ!?」


男が棒を持ってない方の手で殴りかかって来たので、本能的に殴り返してしまった。

そのまま吹っ飛んだ男は、地面に大の字で寝転んでピクリとも動かなくなる。


「まさか……死んでねぇよな?」


普通、一発殴ったぐらいで人は死なない。

が、この体は化け物じみた強さをもつエヴァン・ゲリュオンの物だ。

軽く殴っても、場合によっては死人が出てもおかしくはない。


「ふう、死んではないか。よかった」


確認してみた所、気絶しているだけだった。

とは言え――


「いきなり問題起こしちまったな。ま、仕方ない。とっととずらかるとしよう」


俺は慰謝料こみのパン代を気絶している男の手に握らせ、更に転がっている子供の首根っこを掴んで、面倒くさい事になる前に急いでその場を離れた。


……ま、これくらいの騒動なら大丈夫だろう。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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