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第2話 エヴァン・ゲリュオン

エヴァン・ゲリュオンは、ゲリュオン伯爵家の一人息子だった。

両親は善良そのもので、彼も幼い頃から清く正しく生きていく様に教えられ育ってきた。


優しい両親。

優しい家令達。


そんな人物たちに囲まれ、彼は両親の望む様に清く正しく真っすぐに育って行った。


だが、人生とは常に順風満帆(じゅんぷうまんぱん)とはいかない物だ。

幸せの中にいた彼の人生に、ある日最悪の転機が訪れてしまう。


「ゲリュオン伯爵!貴方を国家転覆を謀った罪で捕縛します!」


領主邸に憲兵たちが押し寄せ、エヴァンの両親、そしてエヴァンを拘束する。


――罪状は国家転覆。


当然、善人を絵で描いた様なエヴァンの両親は潔白であり。

かけられた容疑は冤罪だった。


「何かの間違いだ!!」


だが、伯爵達の潔白を聞き入れる者はいなかった。

何故ならそれを仕掛けたのは、伯爵家の所属する国家――アクリオス帝国のトップであるマンドル皇帝だったからだ。


何故皇帝がそんな真似をしたのか?


実はゲリュオン伯爵家は、かつて世界を滅ぼしかけた邪神を討伐した勇者達の末裔だった。

そして伯爵家には勇者が残した聖剣と共に、それに封じられた邪神の体の一部が代々引き継がれていた。


――それが皇帝の狙いだ。


邪神復活を狙う邪教。

永遠の命欲しさにその邪教と密かに手を結んだマンドル皇帝は、自身の目的を周囲に悟らせない様、ゲリュオン伯爵家を取り潰しにかかる。


そしてその結果、皇帝の目論見通り伯爵家はお取り潰し。

伯爵夫妻は処刑され、その息子であるエヴァンは子供と言う事で処刑こそ免れたが、彼は過酷な環境の監獄へと送られてしまう。


エヴァンの監獄での生活は過酷な物だった。

子供とは言え貴族だ。

他の囚人からどんな手荒い歓迎を受けていたかは想像に難くないだろう。


いわれなき冤罪で家を潰され、両親は処刑。

自身は監獄での地獄のような生活。

清く優しかったエヴァンの心がすさみ、闇色に染まっていくのは仕方のない事と言えるだろう。


そんな中、唯一の救いがあったとするならば、それは彼が勇者の血を色濃く引く天才だった事だろうか。


地獄の様な生活の中、怒りと憎しみから自らを鍛え続けた彼は、やがて監獄では誰も手出しできない化け物へと成長していく。

そして囚人達を圧倒的暴力で掌握したエヴァンは、暴動を起こし、見事に監獄からの脱走に成功する。


その際、自分と一緒に脱出できた12人。

彼らを子分とし、エヴァンはゲリュオン山賊団を隣国――ブレイブ王国で結成した。


「ひぃぃぃ!!」


「助けてください!」


「どうか命だけは!!」


頭領であるエヴァンに、かつての清廉さは微塵もない。

ゲリュオン山賊団は情け容赦なく悪逆の限りを尽くし、やがてアイルー村と言う小さな村を襲撃する事になる。


そしてそこで、エヴァン・ゲリュオンはヘレナと言う村娘を手にかけてしまう。

それが自身の滅びを招く、破滅への引き金(トリガー)とも知らずに。

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