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能力【水虫】。ふざけんな。  作者: 歌歌犬犬
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第007話 水中にて。悪いスライムじゃないんだ。

 上流からくねくね蛇行しながら接近する魔物。

 最初は遠くてなんの魔物なのかわからなかったが、今ならわかるぞ。

 あれは蛇の魔物だ。

 水中で活動する蛇か……まぁ地球にも海蛇とかいうのがいたし、異世界なら尚のこと疑問に思うこともねぇんだろう。


 俺は接近する海蛇もどきに対し戦闘態勢を取る。

 これまでは水中からの奇襲でしか戦ってこなかったが、今回は紛れもない水中戦、相手もこの道のプロだ。

 むしろ生きてきた時間でいえば俺が勝てる見込みはそう高くないのかもしれねぇ。


 俺が普通の水の中に生きる者であったなら、な。


 俺は水中に生きるどころか水そのものとして生きる存在!

 その真髄を今っ、エルフたちが住まうこの場所で明らかにしてやる!


「来いよ蛇助! 俺が相手だぁぁっ!」



 スイ〜………



「なん…だと……!?」


 魔物なのに、スルー……!?

 そんなことってあるのか?

 あの蛇助は絶対肉食だと思うんだけどなぁ……?


 俺の横を華麗に通り過ぎた蛇助はそのまま川を進むと、底の深い場所に潜むように静止した。


 ………なにしてんだ?


 ちょっとあの蛇の魔物の生態がわからない。

 普通に考えれば狩りのため獲物が現れるのを待っているんだろうが、俺のことを素通りしたしなあいつ。

 なにか別の獲物じゃないと反応しないのか?


 んなこと言ってもここにいるのなんて俺かエルフくらい……ん?


 俺、水だったね。


 完全に忘れてた、というか自分は反応されて当たり前の捕食対象だろうと疑いもしなかった。

 変なとこで前世?での感覚が残ってて困るんだよなぁ。


 でもそうか、さっき素通りされたのは俺が【水虫】状態で川の水と見分けつかなかったからか!

 蛇助相手にする前自分で「俺は水そのもの云々」って言ってたのになにやってんだよまじで。

 そりゃ水そのものなんだから他と見分けついたらびっくりですわな!


 さて、となるとあの蛇助は確実にエルフを捕食する気であそこに待機してるんだね?

 そんなこと俺が許すわけないじゃないか。

 正直正々堂々戦うのはまだ不安が残ったが、これならいつもやってる奇襲戦法となにも変わらない。

 しっかり狙いを定めていつもの水鉄砲を蛇助に―――


 撃とうと思った。


 しかし奴は先に動いた。


 ビュン、と水の中に突き出された一本の槍のように蛇助は進み、開かれた大口からは獰猛な牙が見える。

 そしてその先にいるのはもちろん狩るための獲物……


「くっ…タイミング悪いな! 間に合えぇ……‼︎」


 川の縁で洗い物をするそのエルフは未だ接近する蛇助に気付いておらず、このままでは喰われる……!


 俺はこれまで出す機会のなかった全力の速さで蛇助の後を追いかける。


 もとよりそこまで広い幅はない川だ。


 蛇助の脅威がそのエルフを引き摺り込まんと水面から頭を覗かせるのも早かった。


 そのときになって気付き呆気に取られるエルフが噛みつかれんとするその時───俺は必殺の水鉄砲をくれてやった。


「だらっしゃぁぁぁぁっ‼︎」


 ドスッドスッ、と水圧で威力の増した水が蛇助の身体を貫く。

 危ねぇ……仕留められたかは知らんがとりまエルフが喰われる事態は避けられた。

 あとは水中に逃げ込んだ蛇助にトドメを刺せば一旦は落ち着くか?


 まったく、異世界の水場事情過酷すぎんだろ……。


 そんなことを考えながら俺は川底の岩に引っかかっている蛇助を見つけ、トドメにと頭に追加で水鉄砲を撃っておいた。

 まぁあの様子じゃもう死んでたみたいだが、念には念を入れて、だ。


「さて、これからどうすっかねぇ……」


 エルフを襲おうとした蛇の魔物は退治したが、今頃地上では被害に遭ったエルフの子が事情を話して騒ぎになってるかもしれん。

 そんな緊張状態のときに俺が姿を現して警戒されないものかどうか……。


 くそっ、あの蛇助めっ、死んでもなお俺の邪魔をするか……!


 本当に俺は異世界エルフの水浴びシーン、期待してたんだぞ。

 水になっちまった俺の唯一の楽しみ……いや、ケモミミ娘とかのじゃロリとか含めていくつかの楽しみだったのに、こんな水場事情じゃそれも潰えたか。


 とりま地上に顔を出すのは今じゃないだろうし、先に上流向かって特殊な水がないかどうかの確認だけでもしてくっかね……。


 そんなことを思っていると。


「水の大精霊様よ。此度は村の娘を救ってくださり感謝に堪えんのじゃ。礼をしたいところであるのじゃが、どうかその前に儂らエルフの頼みを聞き届けてはくださらんか」


 という声が水の中にまで聞こえてきた。


 ………え、こののじゃ口調のエルフさん、俺に向かって話しかけてるの?

 まさかのじゃロリか!?

 異世界のじゃロリにもう遭遇したのか⁉


 わーい行く行く~頼み聞く~!


 ……ところで水の大精霊って?


「俺は精霊じゃないと思うが……頼みとやらは聞くだけ聞こう」


 水面から顔を出し、ちょっと男前に応えてみる。

 まぁ引き続き【水虫】状態の人型スライムみたいな見た目なんだけどね。

 水中にあんな魔物がいるってわかったら、怖くて人間状態とかムリムリ。


 あ、精霊否定したからってスライムと勘違いされないよな?


 ぼ、ぼくは悪いスライムじゃないよ……?

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