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第2話 「命は等しく平等」

15年前のあの日、俺の人生は一変した、思い出されるのは、最後に交わした両親との他愛の無い会話、そして親友のダニーの最後だった。


あの日の事は、一度も癒える事の無い傷として、今も俺の悪夢として現れる。


「起きろよ!ミハイ!お前に酒なんざ飲ませるんじゃなかったよ」そうゆうと酔い潰れて居た俺にロイが水を掛ける。


「なんだよ!ロイ!いきなり冷てえじゃねえか!」

そう叫ぶとロイを含め周りの男達も盛大に声を上げて笑った。


俺達は今、ロイが入隊祝いと称して奴の行きつけの酒場に来ていた。


俺は酒に弱くそんなに飲めないと言ったのだが。


「おい、おい、先輩の酒を飲めねえとはいわせんぞ!そんな野暮な奴は鉛玉を打ち込んでやる!」ロイはそんな調子で完全に出来上がっていた。


俺は仕方なくロイに勧められるがままに(半分脅しだが)酒を飲み現在に至る。


「でもよミハイ、今朝のお前は本当に傑作だったな!」とロイが酒を煽りながら言ってきた。


「全くだよ、まさか大尉に投げられるなんて、思ってもみなかったよ!」と今朝の事を思い出す。


数時間前、俺は今日が部隊への配属日だったので、基地に来ていた。「いいか新兵!元GSG-9だか何だか知らねえが、ここでは昔の肩書きなんざ意味をなさねえ!今から会う新しい先輩達に可愛がってもらいな!」と案内人の兵士に部隊の待つテントへと送り出された。


「失礼します!今日から配属になった、ミハイル•サンダーランド!階級は2等伍長です!」と入るなり自己紹介をおこなった。


テントの中には4人居て、それぞれ銃の手入れをおこなったり、酒を飲んだり、本を読んだりそれぞれ自由に過ごしていた。


「元気がいいなルーキー!俺はロバート・ハリス、階級はお前の少し上の3等軍曹だ、まあ、気楽に行こうぜ兄弟!俺の事はロイと呼んでくれ、よろしくな!」


と酒を呑んでいた赤毛の男が言った。


「ハハ、まあ、そんなにかしこまらなくてもいいぜ、

俺はジョージ•ウエスト、階級は1等軍曹だ、こんななりだが、この部隊のメディックを務めている、怪我や調子の悪い時は言ってくれ!」と2メートル近くありそうな巨漢の黒人男性がいった。


「もう、うちの男連中は皆暑苦しいはね、私は

レベッカ•スミシー階級は貴方と同じ2等伍長、チームの狙撃担当よ、後方支援は任せてね」とライフルを手入れしながら黒髪を後ろに束ねた若い女性が言った。


「よく来たなルーキー、お前の経歴は資料を一通り見て知っている、我が部隊へようこそ!私がこの隊のチーフを務めるオレガ•シルヴィエだ、階級は大尉よろしく頼む!」と金髪のショートヘアーの美女が言った。


「さて、早速だがルーキー1つ教練の復習をやらないか?」と急に大尉が言ってきた。


「復習ですか?はい、せっかくなのでお願いします。」そう答えると大尉は嬉々として「よし、いい返事だ」と言う。だが一つ気になったのが何か期待する様な目で、他の隊員達が俺を見ていた事だった。


「ルーキー、お前は白兵戦の経験はあるか?」と大尉が聞いた。「軍に居た頃に、教練でやりました。実戦の方は、まだありません」そう答えると大尉は


「なら一つ賭けをしよう、今から白兵戦の模擬戦を行う、私から一本でも取れれば、今夜お前の酒の酌でも何でも付き合おう、だがお前が負ければお前が私に付き合え」と大尉に提案された。


「分かりました、手合わせ願います」と答えた、この選択をした事を後から後悔するとも知らず。


「よし、ルールは簡単だ相手に一発入れたら勝ちだ」


「はい!分かりました」そう言ってお互い身構えた。


大尉の構えは腕を上げ顔を覆っている、一見脇が空いているようだが、脇に攻撃を入れようとすれば、軽くフットワークで捌かれ、かといって正面から殴れば硬い防御があり、さらにカウンターを狙われるおそれがある、攻守において隙の無い構えだ。


対する俺は、教科書通りのファイティングポーズで大尉の動きに即座に対応出来るように備えていた。


「ふむ、教科書通りの良い構えだなではこれで行くか!」と大尉が言った瞬間、右側から強烈な衝撃が襲ってきた!咄嗟にガードを上げて直撃は避けたが今のでかなり脳が揺れたのを感じた。


なんて重い蹴りを打つんだ!俺はあの瞬間強烈なハイキックを受けたんだ!そう考える暇もなく大尉は直ぐに体勢を崩した俺の懐に入ってくる。


俺は咄嗟に左フックで応戦したが、それが俺に出来る精一杯の抵抗だった。


大尉は俺のフックを屈んで避けると、俺のがら空きの顎目掛けて掌底を放ち、その衝撃で浮いた俺の胸ぐらを掴み、そのまま投げ飛ばした。


俺は地面に叩き付けられ、気絶した。


意識が消えかけながら聞こえてきたのは、仲間達の高笑いと会話だった。


「やっぱり大尉の勝ちか、GSGならもしやと思ったんだがな」


「だから止めときなって言ったんだよロイ、あんたはいつも大穴狙いなんだから」


「まあ、流石に大尉には敵わねえか、よし、ベッドに運ぶかロイ手伝ってくれ」


「はいよ、しかし大尉どうでした?このルーキーは見込みありそうですか?」


「まあ、及第点だな、これから仕込んでいけば化けるかもな」


それを最後に、俺は完全に意識を失い、いつもの悪夢にうなされそしてロイが来るまで眠っていたのだ。


そして現在に至る、「しかし、あの大尉とあれだけやれていれば上出来だぜ!」そう言いながらロイは酒を煽る。「そうか?俺は全く歯が立たなかったと思うが」と言って俺は一気に酒を煽る。


「お前達!探したぞ、全く先に始めてるのかよ」


とジョージが酒瓶片手に歩いてきた。


「気分はどうだルーキー?」とジョージが心配そうに言ってきた。「ああ、大丈夫だジョージ、ありがとう」そう言うと「そうか、それなら良かった、後できればだが俺の事は親しみを込めてジョーと呼んでくれ、その方がしっくりくる」


俺は「改めてよろしく頼むジョー!」と言いながら乾杯し酒を飲んだ。


そんな時にいきなり後ろから誰かが覆いかぶさってきた。「Hey!ルーキー楽しんでいるか?まさか私との賭けを忘れたとは言わさんぞ〜!」と後ろを見ると顔を赤くした大尉が居た。


「た、大尉!?あ、いえ忘れていませんよ、取り敢えず離れて下さい!」そうに言ったが大尉はよけいに抱きしめてくる。


「なんだ?照れているのか可愛いヤツだな。」と言ってキスまでしてくる。


「諦めろルーキー、大尉は酒が入るといつものクールさとは打って変わって、甘え上戸のキス魔になっちまうのさ、まあ観念して受け入れろ」とロイが言った。


「また、大尉は弱いならそんなに飲まなくていいのに、腕っぷしが強いから良いけど大尉は美人なんだから気をつけてくださいよ」と言いながらレベッカも合流してきた。


「じゃあ、全員集まった事だし、今日は新しく我々の仲間となったミハイルを歓迎して乾杯!」「乾杯!」

「乾杯!〜」「乾杯!」と言いながら皆と酒を酌み交した。


俺はこれから多くの戦場を駆け回り、地獄を見るだろう、だが今はこの賑やかな宴を楽しんでもバチは当たらないだろう。


俺はそう考えながら「今日は朝まで飲み明かすぞ!」


俺はそうに言って酒を呑むただ今はこの瞬間を楽しもう。


第2話「完」


ウォーモンガーズ   「完」








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