第1話「1セントの価値」
「ミハイル起きなさい!学校に遅れるわよ!」
そう言われて僕は目が覚めた、「母さん、今日は停戦記念日で学校は休みだよ、昨日そう言ったろう?」
そう伝えると母はそうだったはねと言い朝食の準備をしていた。 「ミハイル今日は早起きだな、いつもそうだといいんだが」と父が話掛けてきた。
「父さん!聞いてよ!母さんが今日は学校休みって言ったのに勘違いして起こされたんだよ」と不満げに父に言った。「そうか、それは災難だったな、でもいくら休みでも遅くまで寝ていたら身体に毒だぞ」と父は笑いながら言った。
朝食を家族と共に食べていると、テレビから不穏なニュースが流れてきた。「今日は東側諸国との停戦を停戦を結んだ歴史的な記念日ですが、最近の東側諸国の動きが活発になっており緊張が高まっています」
それを見て父と母を見ると脅えた表情をしていた。
「あの戦争もようやく終わったと思っていたが、まだ火種は残っている様だな」と父は悲しげな顔でそう呟いた。
「父さんまた戦争がおきるの?そんなの僕怖いよ」そう言うと父は「父さんが必ずお前と母さんを守るだから心配するな」と言ってくれた。
「さあ朝食も食べ終わったし父さんは仕事に行くとするか、ミハイル母さんのお手伝いもするんだぞ!」と父は言うと仕事に言った。
「ミハイルそう言えばさっきお隣のダニエルが訪ねてきたわよ?」そう母から聞きダニエルとサッカーをする約束を思いだした。
「そうだった!ごめん母さん今日はダニーとサッカーの約束があったんだお手伝いは帰ってからでも良い?」
そうゆうと母さんは笑いながら「いってらっしゃい、帰って来たらお願いね?」と言い見送ってくれた。
ダニエルとの待ち合わせの広場へ行くとダニエルが待ってくれていた「遅いぞどれだけ待たせるんだよ!」
ダニエルは不機嫌そうに言った。
「ごめん寝坊しちゃって皆はもう居るの?」
そう聞くとダニエルはお前が最後だよと言い急いで皆に合流した。
皆とサッカーをした後帰り道が一緒なのでダニエルと歩きながら話していた。「ミハイ、今日のテレビ見たか?東側の奴らが戦争準備してるらしいぜ」そうゆうとダニエルは少し元気が無かった。「そうだね、戦争は10年前に停戦したのにまだやり足りない人達が居るんだね」
「なあ、ミハイもし俺達戦争で別れてしまってもずっと友達で居てくれるか?」とダニエルから聞かれ僕も
「ああ、勿論!友達だ、、」と言いかけた瞬間突然
大きな爆音と共に近くの建物に何かが当たりくずれた。
いきなりの事に呆然としていると近くの大人達が叫んだ。 「東側からの攻撃だ!奴らが攻めてくるぞ、逃げろ!」その声が聞こえた瞬間我に返り隣にいるダニエルと顔を見合わせた。
「ダニー!今の話が本当なら僕達も危ないよ!直ぐに母さん達に伝えなきゃ!」ダニエルに声を掛ける、するとダニエルは「駄目だ!攻撃があったのは丁度俺達の家の近くからだ今は避難所に逃げておばさん達が来るのを待とう!」
その言葉を聞き僕もそれに同意して避難所へと向かった、向かう道中見慣れた建物や道が破壊され全く別の世界のように見えた。その光景見ながら走っていると声が聞こえた。
「助けてくれ!瓦礫に挟まって動けないんだ」見ると一人の男性が瓦礫の山に防がれた建物の中にいた。僕は咄嗟にダニエルに声を掛けたが彼はこう言った。「ミハイ、俺達はまず生き残る事が先だ辛いかもしれないけど俺達には無理だよ」そう言ってダニエルは走り出してしまった。それを聞き僕は子供ながらに残酷な選択をしてその場を後にした、助けを求める声を振りほどいて。
避難所に着くと母さんと父さんそれにダニエルの両親も居た。
「ミハイル!無事だったのね!」そうゆうと母さんは僕を抱きしめてくれた。僕は安堵すると涙が溢れてきた。「母さん!僕、本当に怖かったよ!もう二度と母さんや父さんに会えないと思っていたんだ!」と泣き出しながら叫んだ、そんな僕を見て父さんも抱きしめてくれた。ダニエルも両親に抱きしめられながら泣いていた。
「さあ、ここに居れば安全だ直ぐに国外に避難出来る列車が来るそれに乗って国を出よう」と父さんが言った。
その瞬間凄まじい轟音が辺りに響いた。そして避難所の入口を見ると武装した東側の兵士が入って来た。
「お前達西側の豚どもは一匹たりとも逃がさん!」そう言って兵士達は持っていた銃を乱射した。
僕は状況が分からず困惑したが直ぐに母さんが僕を抱えて出口まで走った。
「母さん!父さんは!?」そう聞いたが母さんは鬼気迫る顔で僕を避難用の列車に乗せた。そして母さんはこう言った。「ミハイル、母さんはお父さんを探して後から行くは、だから貴方は先に行って待っていて!愛してる!」そう言うと母さんは人混みの中へと消えていく、僕は必死に「母さん!待って!置いていかないで!」そう叫んだが声が届く事は無かった。
そして銃声と共に列車が動き出した、動き出したのと同時に大勢の人が乗り込もうとして来ていた。そしてその中にダニエルも居た。
「ダニー!掴まるんだ!」そう言って手を伸ばすとダニエルもそれに気付き手を伸ばしてきた。
「ミハイ!ありが、、」その時だったダニエルの伸ばした手は届かなかった。手を握る瞬間銃声が響きダニエルを撃ち抜いたからだ「ダニー!」その瞬間目が覚めた。
「また、あの日の夢か」そう呟くと俺は昔の事を思い出した。
「ようルーキーお目覚か?」と声の主を探すとテントの入口に赤毛の男が立っていた。
「今日もかなりうなされてたぞ、また例のあれか?」
と男が話しかけてくる「ああ悪いな、ロイまた悪夢を見ちまったよ」そう呟くとロイは笑いながら大丈夫だと言った。
「まあ心配するなよ、俺もお前さんと同じPTSDになった事もある、まあ時間を掛けて治せばいいさ。」と
ロイは言ってくれた。
「なあ、ロイ俺達戦争屋に価値なんてあると思うか?」と不意に口にした。
するとロイは驚いた表情をした後高笑いしながら答えた。
「ルーキーお前とうとうイカれちまったか?そんなもん俺達消耗品に1セントの価値でもあると思ったか?」とロイはそう答えた後今までの態度とは打って変わり兵士の顔になりこう続けた。
「いいかミハイ、俺達は戦争で全てを失いそして戦争によって生かされている、そんな俺達に命の価値なんて下らん事は考えねえのさ生きるも死ぬも天任せそれが俺達ウォーモンガーの宿命なんだよ」とロイはいつになく真面目に答えるとまたいつもの調子に戻る。
「まあ、こんなしみったれた話は後にして向こうで飲もうぜ兄弟!今日は俺からの入隊祝だ!」
そう言うとロイは行ってしまった。
「俺達みたいな戦争狂には1セントの価値もないか、、」例え価値の無い消耗品だとしても戦場がある限り俺達は必要になってくる。
最後にくたばるその日まで「俺もせいぜい足掻くとするか」そう言って俺はロイの後を追った。「完」
第2話に続く