八.ずっと貴女を愛していた ―10
「……梔子。私はここで、貴女にすべてを話すと約束した。だがその前に……少し、貴女に尋ねたいことがある」
「尋ねたいこと……ですか?」
「ああ。鞠花嬢が屋敷に置いていった雑誌のことだ。貴女は、あの雑誌の記事を見せられたと言っていたね」
そう言われて、梔子は思い出す。
鞠花が梔子に見せつけるために持ってきた雑誌は、紅月を貶める内容をこれでもかと書き立てていた。
中でも忘れられないのは、紅月が家族を手にかけて外つ国へ逃げたなどという、荒唐無稽な記事を大見出しにして書いていたことだ。
「あの雑誌には、私の過去についてもたくさん書いてあっただろう? 私が……家族を無惨に殺したと」
「……はい。読んで、とても……苦しく思いました。なぜ、こんな根も葉もない、ひどい嘘を書くのかと……」
すると、なぜか紅月は驚いたように梔子を見つめてくる。
「……梔子。貴女は、あの記事を少しも信じなかったというのかい? 私はずっと、貴女に過去のことを黙っていた。あの記事には、もしかしたら本当のことも書いてあるかもしれないと……貴女がそう疑いを持ったとしても、仕方のないことだと思っていたが」
「……!?」
紅月の言葉に、梔子は耳を疑う。
だって、紅月が家族を殺害したなんて、そんな話をどうやったら信じられるというのだろう。
梔子は慌てて首を横に振った。
「信じられるはず、ありません……。紅月さまは……あなたは、とても優しい方です。誰かを殺すようなことができる方だとは、私にはとても思えません……!」
「梔子……」
声を荒らげた梔子の頬に、そっと紅月の手が触れた。
彼はどこか切なげな微笑みを浮かべて、梔子を見つめている。
「……ありがとう、梔子。貴女は、私のことを、そんなふうに思っていてくれたんだね」
惑うように、紅月は一度目を伏せた。
けれど再び視線を上げた時、彼の瞳は決意と覚悟を宿していた。
「今こそ、貴女にすべてを打ち明けよう。どうか、聞いていてくれるかな」
梔子は、頷いた。
それから紅月が語ったのは、梔子の思いもよらない、彼の過去の話だった。




