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玄関ダッシュ五秒の女子高にオレひとり  作者: なるるん
夏休み・もうひとりの少女:菅原レイちゃん
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第98話:菅原さん



「はじめまして、菅原(すがわら)レイ、です。今日は無理言ってお邪魔してすみません」


 白いワンピースに、ベージュ色の丈の短いカーディガン。

 うぐいす色の日傘を持つ手も、白いアームカバーで日焼け対策もばっちりみたい。


 声を聞かなければ、清楚を絵に描いたような、可愛いと言うか、可憐な()()()にしか見えず。


 川村くん以外の男子三名も名乗ってご挨拶すると、ウチの番。


「園田です、今日はよろしく」


 軽く会釈して、簡単にご挨拶。


 したらば。


「うわぁあ、写真よりずっと可愛いっ! よろしく! 園田さん!」


 日傘を置いて、うちの手を取り、ぶるんぶるんと上下に振り振り。


 両手握手かな?


(てか、川村くん、ウチの写真、見せたの?)


 隣に居た川村くんに、耳打ち。


(あぁ、マズかったか?)

(いや、まぁ、別にマズくは無いけど……あんまり余所(よそ)には出さないで、ね?)

(それはわかってる)

(頼むよー?)


「川村くんから園田さんの事を聞いて会いたくて会いたくて。お会いできて光栄です!」


 まだ両手ぶるんぶるん。


「あ、はい、ありがとうございます。こちらこそ光栄です」


 雪人さん、アキラくん以外で、同年代で『女装』してる男子に会うのは初めて、ってこともあって。


 ウチも、ちょっと嬉しかったりする。


 それにしても、菅原さん、めっちゃテンション高いね。


(それにしても、菅原さん、めっちゃテンション高いね)


 思った事をそのまま川村くんに耳打ち。


(普段は寡黙でおとなしいんだけどな……園田に会えたのが、本当に嬉しいんじゃないかな。他の女装男子に会う機会もほとんど無いみたいだから)

(なるほど……)


「じゃ、じゃあ、とりあえず、先輩のお宅に向かいながら、お話、しましょうか」


「あ、はい! よろしくお願いします!」


 さすがに、両手握手ぶるんぶるんも、終了。


 ウチが扇動……じゃなくて、先導して、金髪子先輩宅へ出発。


東雲(しののめ)女子が共学化してたなんて、知りませんでした」


 日傘をさし直した菅原さんと並んで歩きつつ、会話。


「それが、実は、まともに共学化するつもりなかったみたいで……」


 一応、男子でウチがひとりだけ入学したこと。

 男子用の制服が用意されてなかったこと。

 校則が、女子高のままだったこと。


 などなど。


 ウチが女装する事になった経緯を説明。


「じゃあ、わたしと少し違うんだね……」


 今度は、菅原さんのお話。


「わたしの場合は、小さな頃からずっと『なんで女なのに、身体は男なんだろう?』って、思ってて、ね……」


 肉体的な性別と、精神的な性別の認識に食い違いが、ある状態、だっけ。


「中学時代まではその事で悩んでたし、進路のこともあって父親と大喧嘩してさ……」


 うわぁ……それは……修羅場?


 てか、こんな話、初対面のウチが聞いていいのか?


(こんな話、初対面のウチが聞いていいのか?)


 立場上、すぐ後ろを歩く川村くんに、またこっそり耳打ち。


(いいんじゃないか? 逆に聞いてもらいたいんだと思うぜ?)

(そっか。了解)


「父親がどうしても家業の鉄工所を継いで欲しいって言うから、わたしが女の子の格好で過ごしてもいいって条件で後を継ぐ事にしたの」


 なるほど……おそらく、話としてはかなり端折っての説明なんだろうな。


 もっと深い話があるに違いなさそう……。


 それを考えると、ウチの話は、うん、かなり軽い、よね?


「今通ってる工業学校も家業に関わるところもあるけど、LGBTQに配慮してくれる、って事で進学したの」


 で、たまたま、その学校で同じクラスになった川村くんと仲良くなって。


「で、ね、わたしみたく、男子の身体で、女子の格好してる子って珍しいから、園田さんの事知って、どうしても直接お話、したくって」


 その伝手(つて)で、ウチと知り合う事にもなった、と。


 これも。


 奇遇と言うか、何と言うか……。





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