第96話:夏休みの最後は金髪子先輩宅へ集合
最初の森本くんの何気ない『男装してみます?』のひと言から。
男装用の服を見繕いに行ったものの、女性的な身体のラインが浮いてしまうって事で、いったん、断念。
エリ先生の提案で、コスプレショップで身体のラインを矯正する補助具を仕入れたのはよかったけど。
今度はその補助具の上に着る男物の服が無いって事で、若林くんと山田くんに古着をお借りして。
矯正補助具のおかげもあって、身体のラインはそれなりに男子っぽくはなったものの。
それでもまだ、完全な男装に及ばず。
問題は、髪型と、口調。
声質は、ウチも同じでどうにも難しいところなので、それは一旦置いておいて。
髪型に関しては、別途個別にウィッグを探してみよう、って事にして。
口調。
男言葉、男子的な喋り方を、と。
次回、川村くんの番だけど、森本くん、若林くん、山田くんも加えて、総がかりで先輩方の指導をすることに。
なんか、もう。
話が進み過ぎてて。
男子に慣れない先輩方も。
すでに男子の彼らとある程度話せるようになってるし、無理して男装とかしなくてもいいんじゃない?
って、思わなくもないけど。
凝り出したら、とことん、って感じなのかなぁ……。
ついでと言うか、飛び火した形で、ウチの女子言葉についても再燃。
エリ先生が主張する、女の子らしい喋り方を、と。
さらに、川村くんが。
『前に話したことある、オレの学校の知り合い、連れてっていいか?』
「あ……えっと、女子化してる男子、だっけ?」
『ああ、園田の話をしたら是非会いたい、ってな』
話したんかい……。
まぁ、ウチとその人では、根っこの部分で違いはあるのかもしれないけど。
雪人さんとアキラくん以外で女装してるヒトと会うのは初めてだし、興味はある、かな。
それもあって。
さすがに大人数になるので、会場……場所はどうする?
と。
『ウチが一番無難かな?』
名乗りをあげてくれたのは、金髪子先輩こと、小坂ミリィ先輩。
『時間も結構かかりそうだから、朝から集まりましょう』
仕切りは一応、顧問のエリ先生。
『そうだね。じゃあ、シズさんに頼んでランチ用意しておいてもらうわー』
『よろしく』
『真綾ちゃんの手料理食べたいですわね』
ぱっつん子先輩こと、大里サクラ先輩。
「いいですけど……シズさんと一緒に作りましょうか?」
『よろしくお願いしますわ』
『シズさんに伝えとくー』
そう言えば。
すっかり忘れ去られてる感もあるけど、お料理教室の話もあったな。
色違いのお揃いのエプロンも、お蔵入りしてるし……。
夏休み明けから家庭科室を使わせてもらう段取りになってたはずだから、とりあえず、夏休み中は忘れておいてもいいか。
そんな事をぼんやり考えていたらば、グループチャットにエリ先生からメッセージ。
『女子組は男装で、園田さんも私服でいいわよ』
「私服って……女装、ですよね?」
『あたりまえ』
うぇえぃ。
まぁ、いいけど……。
そんなこんなで。
夏休みも、もうほぼ終わりの頃。
金髪子先輩のお宅へ、ぞろぞろと、押しかける事になりまして。