第89話:服を買いに行くための服が無い状態
コスプレショップで、先輩方が『男装』するためのグッズを入手。
ただ、そのグッズを装着したまま『しの女』の制服に戻すのは無理があるため。
「どうしよう、男性用の服を見繕うのに、これを装着しておかないといけないし」
「そうすると、装着した状態で着る男性用の服がないよね……」
そう。
服を買いに行くための服が無い状態。
「それなら……」
と、助け舟を出したのが、若林くん。
「オレのお古でよければ、お貸ししますよ?」
「え? 若林くん……いいの?」
「うん。古いやつなら、なんなら、あげてもいいし」
「それはありがたいけど……サイズ的にどうなのかなー?」
しかし、金髪子先輩が困った表情で。
「サクラはいいとして、ウチとかツグミはサイズが……」
若林くんは、ぱっつん子先輩とほぼ同じ身長。百七十前後あるはず。
ぱっつん子先輩がグッズを装着すれば、体格も似た感じになるから、ぱっつん子先輩はいいとして。
サイズ感的に、いちばんギャップのある金髪子先輩。おさげ子先輩も、微妙。
あぁ、おさげ子先輩は、ウチと似た体格になるから、ウチのお古でもいいかな?
でも、若林くん。
「中学時代のとか、捨てずに取ってあるんで、サイズも色々揃ってるはずです」
だ、そうで。
そう言えば、若林くん、中学二年ぐらいから一気に身長が伸びて、すぐに服のサイズが合わなくなるって、ぼやいてたっけか。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかしら?」
エリ先生が代表して。
「よろしくお願いします、ね。若林さん」
「はい。それで、どうしましょう? これからオレん家、行きます?」
うーん。
午後いちの集合で、ここまでの移動とか含めて、結構な、時間。
ここからウチの最寄まで戻るのにまた小一時間として。
「そうね……次の予定の時に、もう一度いいかしら?」
「次っていつでしたっけ?」
えーっと。
次は、山田くんの番で、日程は……。
「この日だね」
携帯端末のスケジューラを見せる。
「うん、その日ならいけるよ」
若林くんも、快諾。
「じゃあ、若林くんの家集合で大丈夫?」
さらに、若林くんにおんぶ抱っこ。
「全然、いいよ。むしろ……」
男子の家に訪問する。
先輩方、大丈夫、かな?
「そうね……沢山の洋服を持って来てもらうのも大変だし、訪問した方がよさそうよね」
取り急ぎ、エリ先生は大丈夫そうだけど。
「園っちも一緒だし、まぁ、大丈夫っしょー」
「そうだね、男子のお宅に訪問とか……初めてでドキドキしちゃうけど」
「こうなったら、オンナは度胸、ですわね」
ちょっと待って?
ウチの家にも、良く来られてます、よね?
特に、おさげ子先輩。
男子宅初訪問!
とか。
何か勘違いされてません、かね!?
まぁ、空気読んで、ここは突っ込まず。
「じゃあ、次回は山田くんも含めて、若林くん宅ってことで?」
「はーい」
「異議なーし」
「それで結構ですわ」
ふむふむ。
どうせなら。
山田くんにもいくつかお古、持って来てもらえば選択肢増える、かな?
山田くんにメッセージで状況を伝えてみたらば。
『弟の古着とかもあるから、それも持ってけばいいな』
とのこと。
『助かる。よろしく頼むわ』
『まかしとけー』
ってことで。
この日は、また小一時間かけて、ぞろぞろっと、最寄まで帰宅。
次回また、数日後に。