第55話:エリ先生、曰(いわ)く
わが家での食事会となった、ぱっつん子先輩のお料理教室。
ぱっつん子先輩へのお料理教室、か。
食後に母さんからのどえらい爆弾を投げ込まれて。
一同、神妙。
ウチも含めて、と、言うか、ウチがいち番ダメージを喰らった感も、無きにしも非ず。
でも。
意外と。
そんなに大きなショックは受けていなさそう。
ふーん、と、言う感じでも、無く。
あぁ、母さん、やっぱり苦労してたんだな、と。
小さい頃に。
『なんでお父さんはいないの?』
って、訊ねた事も。
『お父さんは遠いところに居るけど、会うことはできないの』
って。
なるほど。
居るだろうけど、会えない。
居場所がわからないんだから、仕方ない、か。
ふらっと戻って来たりされたら。
今さら『オレが父親だ』とかって、出て来られても。
かえって、困る、よね……。
タイミングはものすごく微妙だけど。
真実を知れて、良かった、とは、思う。
「どうしたの? 難しい顔して……やっぱり、お母さまのこと……」
並んで歩いているエリ先生が、ウチの顔を覗き込んで。
「あぁ……いゃ……うん……まぁ……」
図星。
さすが、先生?
ちなみに、三先輩は前を歩いている。
『男の子なら、ちゃんと女の子をエスコートして駅まで送ってあげなさい』
母さんの指令が無くとも、もともと、送るつもりではあったけど。
こんな時だけ男扱いかい、と、思わなくもないが。
もとより、それが、本来のあるべき姿。
仮初の姿が主になって数か月。
意識しているとは言え、考え方や言葉遣いも。
「わたしもそうだけど、あの娘たちにもショッキングな話ではあったわよね……」
だろうなぁ。先生もまだ独身だろうし、先輩たちと同じような状況だって言ってたから、彼氏とかも居なさそう。
ウチに構わず、エリ先生はひとり言のように続ける。
「でも、ためになる話ではあったわね」
母さんの話を聞いて、思ったこと。
「『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』、でしたっけ」
「そうそう、『男』の事を知らなさ過ぎて、このままじゃ、まずいよ、って」
先生はわからないけど、三先輩は男性を怖がっている節があるので、母さんみたいにコロっと、って事は無いだろうけど。
いつまでも拒絶している訳にもいかないだろうし。
え?
そう?
本当に?
生涯独身、と言う選択肢も、無くはないだろう。
でも、それでいいの?
本人次第、か……。
「と言うことで、明日、またココに集合よー」
は?
駅前に到着し、三先輩が振り返って、何やら。
「何? 何のこと?」
考え事してたり、先生と話したりで、前を歩く三先輩の話は全く聞こえてなかった。
「だから、学校で料理教室開くなら、エプロンを揃えましょう、って」
おさげ子先輩が説明してくれる。
「明日午後、またこの駅に集まって、お揃いのエプロンを買いに行きますわよ」
息ぴったり、説明がぱっつん子先輩に繋がる。
「はぁ……」
ウチは自前のエプロンあるけど……。
お揃いとかって、ますます部活みたいになってますやん。