第53話:ぱっつん子先輩の嫁入り?婿取り?
「うんうん、これなら及第点ね」
母さんも、ぱっつん子先輩の作った肉じゃがを口にして、そう評する。
「いつでもお嫁さんに来てもらえるわね」
「母さんっ!?」
何を言い出すんだか。
しかし。
あせるウチを後目に、ぱっつん子先輩は落ち着いた様子で。
「残念ながら、わが家はわたくししか居りませんので、嫁ぐわけにはいかず……結婚となると、わが家へ嫁いでいただく必要がありますわね」
「それは残念ね」
嫁にはやらん、と、言ってたもんね、母さん。
嫁じゃないよ?
一応。
婿だよ?
「ウチもひとりだし、同じなのー」
金髪子先輩もひとりっ子なのか。
「わたしのところは、妹に継がせれば、わたし自身は嫁げますね」
いやいや、いやいや、おさげ子先輩?
「はいはい、わたしはフリーだし年齢的にも、いつでも今すぐでも嫁げます!」
エリ先生まで、手をあげてまで、何を言い出しますやら?
それ以前に。
「先輩も先生も、先ずは料理ができるようにならないとダメなんじゃ?」
突っ込んでみる。
いや、もっとそれ以前の問題があるような気もするが。
ウチでいいのか?
とか。
年齢的に、今すぐは絶対無理だよ?
まぁ、みんな冗談で言ってるのはわかってるので。
母さんも含めて、じゃれ合ってるだけ、の、ハズ。
女子トーク、恐るべし?
だよね?
「うーん、そうね……なら、しばらく八時間目をお料理教室にしましょうか」
エリ先生が、安直に、そんな事をおっしゃいますが。
「えー、毎週ウチでやるの? さすがに、それは……」
「なら、家庭科部が家庭科室を使うスケジュール確認してみるわ。家庭科室ならいいでしょ? 場合によっては、家庭科部と合同で、とかも」
それなら、まあ?
って言うか、もう、完全、部活動みたくなって来たね。
もともと、ダッシュ五秒で帰宅できる帰宅部希望だったのに。
週に一回なら、まあいいか……。
「料理は出来て損はないですしね!」
エリ先生の現在の食生活や、いかに。
あ。
エリ先生は実家で親に作ってもらってるのかな?
「いや、むしろ、結婚するしないに関わらず、必須スキルよね……今はまだ出来ないけど」
おさげ子先輩のおっしゃる通り。
ウチみたいに母子家庭だと必須スキルだし。
将来、独立して独り暮らししたとしても必要だし。
結婚……は、まだイメージできないけど、共働きの奥さんと交代で食事用意したりとかは、必要になるんじゃないか、とも思うし。
「うーん……ウチはお手伝いさん居るし、別に出来なくても大丈夫ではあるんだけどねー……」
金髪子先輩ん家は、特殊だと思います、よ?
「ちょっと面倒そうだけど、みんなで料理するのは楽しそう、かもー」
その金髪子先輩も同意して。
「じゃあ、早速、月曜日に調べてみるね」
エリ先生も、やる気まんまん。
「みなさん、がんばって下さいね。真綾も、ちゃんと教えてあげるのよ?」
母さんも、あと押し。
「いや、大里先輩が教えるんでしょ?」
「まだ慣れないんだから、真綾がちゃんとサポートしてあげないと、ね?」
うぅ、そっかぁ。
でも。
金髪子先輩の言葉通り。
面倒そうだけど、面白そう、では、ある。
かも?