第5話:自己紹介から……はじまらない
「じゃあ、先ずは自己紹介からはじめましょうか」
教壇に立つ幼顔の女性教師が宣うが。
前に座る三人の女子生徒……二年生みたいだから、一応、先輩か……その三人の先輩たちは。
「……」
「……」
「……」
左から、ぱっつん先輩、金髪先輩、おさげ先輩。
見事に、無言。
そういえば、まだ幼顔の女性教師の声以外、聞いてないよな。
見た目、ものすごく美人さんたちだから、声も美人さんなんだろうなぁ。
声が美人って何だよ?
「ええっと、じゃあ……」
幼顔の女性教師は、声も幼ない感じがする。
と、すると。
「大里さんから、自己紹介、お願い」
幼顔の女性教師が、左のぱっつん先輩の肩に手を置いて懇願。
ぱっつん先輩の肩が一瞬、ぴくりと動くが、その後、停止。
睨むような視線で、でも、オレの方は見ず。
「オ……オトコに名乗る名など……あ……ありませんわ」
ぼそり、と放つ暴言は、しかし。
予想通りに、いや、予想以上に。
お嬢様然として、お嬢様な、声。
ただ、その声の質には、明らかにオトコを嫌悪した響きが、ありありと。
これは……いや、もう、なんだ。何て言うか、その。
……面倒くさそう……。
「じゃ、じゃあ、小坂さん!」
幼顔の女性教師が、右にズレて、真ん中の金髪先輩の両肩に両手のひらを乗せる。
「ん……サクラが話さないなら、ウチも話さない……」
ほほぉ。ぱっつん先輩の名前は『大里サクラ』か。
金髪先輩の声はと言うと。
背の低さと裏腹に、声の方は高く、より幼さが強調されて。
中学生と言うよりは、まるっきり小学生風。
「じゃ、じゃ、じゃあ、じゃあ……」
幼顔の女性教師が言い終える前。
右端のおさげ先輩がぽつり。
「右に同じ」
いや、こっちから見たら右だけどさ。
そっちの位置だと左じゃない?
まぁ、日本語って難しいよね。
それはともかく。
おさげ先輩の声は一瞬ひと言だけだったのでピンと来ないが、見かけの通り、なんとなく優等生! って感じのシャープさのある声だった……気がする。
「中原さぁん……」
そして、幼顔の女性教師の泣きごとから、おさげ先輩は『中原さん』と判明。
金髪先輩が『小坂さん』と、フルネームがわかったのはぱっつん先輩の『大里サクラ』だけか。
背の順に『大里』『中原』『小坂』で、三人セットだと覚えやすいかな。
大里ぱっつん子先輩。中原おさげ子先輩。小坂金髪子先輩。
この際、下の名前はどうでもいいや。
下の名前を呼ぶコトなんて、無いだろうし。
ふむ……。
とか、一瞬で思考を巡らせていると、幼顔の幼声の女性教師が、半ば叫ぶように。
「じゃじゃじゃ、じゃぁ、じゃぁ……園田くん!」
あ、やっぱり。
来ましたか。
来ますよね。
順番で言ったら、次、オレですよね。
仕方ないなぁ……。
「オレは……」