第47話:母さんと奥さん
『あ、ちょうどよかった。今メッセージも送ったけど、注文してもらってた商品が届いてるよ』
おぉ。
日曜朝。
ニチアサ。
それは、もう、いいって。
ショップに電話をしたらば。
すっかり忘れていた、注文品。
「じゃあ、取りにうかがうついでに、またちょっとご相談、良いですかね?」
『もちろん良いよ』
って、コトで。
三度。
女装男子専門ショップ『YUKITO』さんへ向かう。
『しの女』の制服で、母さんとふたり。
電車でひと駅からの徒歩で少々。
トホホホホ……。
やっぱりなんか、見られてる感が強い。
前におさげ子先輩と繁華街を歩いた時は、ヒトが多すぎて視線だかなんだかわからない感もあったけど。
ここは繁華街と違って、ヒトが微妙に少ないのがまた。
視線があきらかにこちらに向いてるのがわかって、辛いっすよ、お母さま。
母さん?
「どんな~、お洋服~、に、しっましょぉ、か~?」
るんるん、うきうき。
楽しくてしょうがない風の歌まで飛び出し。
可愛いんだか、恥ずかしいんだか。
いや、問答無用で恥ずかしい。
ウチが女装しているより、ずっと恥ずかしい。
少し離れて歩こう……。
「うわぁ、『しの女』の制服だぁ。やっぱり可愛いねぇ!」
少し遠くから聞こえて来る声。
もちろん、知らない人。
ちらっと声のした方を見ると、別の学校だろうか?
同じ歳の頃の女子数名。
やっぱり目立つよなぁ、この制服……。
そんな恥ずかしい思いをしつつも、到着。
「いらっしゃい」
あら?
きょろきょろ、と見渡してみても。
今日は、アキラくんはいらっしゃらず?
店長さん……ユキトさん曰く。
「あぁ、アキラなら今日は家で両親に面倒見てもらってるよ」
との、こと。
「またよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね……と、言いたいところなんだけど……」
ユキトさん、今日は何やら別の仕事があるらしく。
奥さんのアカネさんが。
「今日はわたしがご案内しますねー」
え? 大丈夫なの?
と、一瞬思ったのが顔に出たのか。
「長年、女装趣味の旦那さまの相手してるからねー。わたしも女装のノウハウはバッチリなのよー」
との、ことらしく。
「はぁ、よろしくお願いします」
「じゃあ、こちらへどうぞ、どうぞー」
今日は、女装ショップの方ではなく、隣の少女向けファッションのお店の方。
「はい、お邪魔いたしまーす。よろしくお願いしまーす」
のりのりの母さんも健在でした。
ご健勝で、何より?
「お母さま、こちらこそ、よろしくですー」
ふむ。
母さんともども、奥さんに連れられて。
女の子向けの洋服屋さんって、こんな感じなのか。
まぁ。
ランジェリーショップよりは、マシだよね。
あれは、ヤバイ。
これも、ある種、ヤバイけど。
男物のショップとかもほとんど行ったコトがないから違いがよくわからないけど。
絶対的に。
ほわほわ感?
ふにふに感?
女子!
女の子っ!
「どれも似合いそうだわ、どれにしましょうか」
「えっと、男の子の場合は、ですねー」
おっと。
その、男の子のウチをさておいて。
女子ふたり。
女性ふたり。
奥さんと母さん。
盛り上がり始めてます!
なんだ、これ?