第348話:ここからはじまる
一年間の、執行猶予。
問題の先送り、とも、言う。
漠然と、一年後くらいかなぁ、って、思ってたんだけど、決定的だったのは、上谷さん、牧乃緑ちゃんの、告白。
直近で事に及ぶにしても、上谷さんの件を、ある程度は区切りを付けておかないと、いけない。
断るにしても、受け入れるにしても、ね。
だから。
先延ばしにした、とは、いえ、考えなければいけないこと、やらなきゃいけないこと、いっぱい、いっぱい。
それに、その間に、みんなのことも、もっと、もっと、知らねば。
特に、シズさんと、上谷さんの、こと。
ただ。
時間を伸ばした事によって、新たな問題、課題が噴出って可能性も、考えられてしまう。
怖いのは、上谷さんだけじゃなくて、下谷さんまで、とか、ならない、よね……。
自意識過剰かもしれないけど。
願わくば、それは無い方向でお願いしたいところ。
そしてさらに怖い情報として、上谷さんの発言。
七ちゃん九ちゃん、七種さんと九重さんの、話。
彼女たちも、男性と結婚したいって言ってるって、話。
いや、家柄とか考えたら、先輩たち同様に、親の意見とか意志とかが入りそうな気がするから、あたしがってのは、考えにくい、か。
七九コンビは、先輩たちと違って、あたしと子作りとかはあり得ないし、ね。
それよりも怖いのは、八時間目の面々だけではなく、他の女子生徒も? なんてのが、無いとも言えなくなってきた感じもするし。
そっちの不安も、あったりは、しつつ。
全員同時に、って言ったのは。
個別に順番を決めきれないのもあるし。
ひとりづつだと、何か、隠し事してるみたいで、うしろめたさが、あるから。
実際、本来は、隠し事、と、いうか、秘め事のハズでは、あるんだけど。
状況が、状況で。
彼女たちも、お互いに認識しあってるって、話だし。
もう、みんなで仲良く! って、感じで、いいんじゃない?
って、ね。
そして、まだ、構想中、なんだけど。
みんなに思いとどまらせるような策は、無いものかとも考えて。
例の雪人さんファミリーの同意書の、改訂版のさらに改訂版を、作ろうかと。
先輩たちが、ゆるふわ方向に改訂版を作ったけど。
それは、それと、しておいて。
実際の場面でも活用できるように。
ガチのヤツを、ひそかに作ってやろうかなーって。
ふふふ。
さらに。
母さんに試験出された時に思った事。
母さんにも『もっと過激な試験問題』を出してやろーって。
あれを、実際に作って、みんなにもやってもらおうかな?
なんて。
それくらいで恥ずかしがるようじゃぁ、って、ね。
もちろん、間違った知識で臨まれても、こっちも困るし!
あたしも。
そっち方面の勉強、がんばらないと?
ここらへん。
また、雪人さんにも、相談してみようかなー、なんて、軽くメッセージアプリで投げてみたら。
『それなら、いい資料があるよ』
なんて、有難い、お言葉。
雪人さんがアカネさんと結婚する前、高校時代に、お母さんたちからプレゼントされたものだそうだけど。
『知ってるかい? 市販されている映像、DVDとか漫画、コミックって、成人向けの指定があって、未成年は買ったり観たりできないんだけど、文庫……小説って、成人向けの指定が無いんだよね』
なるほど、それは、盲点?
って言う事で。
『ちょっと古くて申し訳ないけど、当時、母さんたちから買い与えられた本、真綾ちゃんに贈呈、するよ』
もらえるものは、有難く!
教材として、活用させていただきます。
『ちなみに、目録はこんな感じ』
って、本のタイトルの一覧が、送られて、来る。
一番上にある作品のタイトルが。
『思春期レッスンA・B・C』
そのうしろにも、それっぽい感じの単語の入ったタイトルが、ずらり。
ふむふむ、なるほど、そういう感じなのか。
いやはや、やっぱり。
聞けば聞くほど、雪人さんも苦労されてたのが、よくわかります。
なので、女装の先輩としても、そういう方面の先輩としても。
今後も、ますます、お世話になります!
さあて。
すでに始まっている、東雲女子高校二年目の、女子高生としての、生活。
自宅玄関を開けて、押しボタン信号が青なら、ダッシュで五秒で登校できる、女子高校。
純粋な男子としては、あたし……いや、オレひとり。
前途多難、では、あるものの。
逃げてばかりも、いられないから。
がんばる、と、しても。
また、何が起きるか、さっぱりわからないこともあるし。
まだまだ、これから。
ここから、はじまる、あたしの物語。
なるように、なるるん!
<了>
※明日、あとがきみたいなの、追加して完結の、予定デス。




