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玄関ダッシュ五秒の女子高にオレひとり  作者: なるるん
最終章:あたしの未来、オレの未来
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第347話:一年、待ってください



 帰宅した母さんと、食事も済ませて、交代でお風呂に入った後。


 リビングにて、お茶などしつつ、くつろぎながら。


「母さん、ちょっといい?」

「なぁに? あ……あの件、かな?」


「あー、うん、その件もあるんだけど、もうひとつ、今日、ね」


 ずずっと、お茶をひとクチ。


 少し、気持ちを落ち着かせてから。


「一年の子に、告白されちゃった」

「ぶっ!」


 母さんも、ちょうどお茶にクチをつけた瞬間だったっぽく。


「けほっけほっ。告白? 相手は男の子? 女の子?」

「いや、うちの高校、女子校なんだけど……」

「そうだったわね」


 ひとりだけ男子いるけど、それってあたしだし。


「あっ、例のトランスジェンダーの子!?」


 母さん。


「なんか変な影響、受けてない?」

「それで? 一年の女の子に告白された、と」


 スルーしましたね。


 まあいいや。


「放課後に呼び出されて、ね」


 かいつまんで。


 夕方の出来事を、母さんに、ご報告。


「んー、高一で結婚とか子作りとか、ものすごく先走ってる感じがするわね」

「それ言い出すと、高三で子作りとか言ってる人も居るし、ねぇ」


 さらに言うと、高三であたしを産んだヒトも目の前にいらっしゃいますよね。


 棚に上げるとは、この事か。


 それはいいとして。


「その子、上谷(かみや)さんの事もあって、例の件、さ」

「う、うん」


「正直、すごく迷ってる」

「うん……」


 母さんが、断ってくれればよかったのに、って。


 母さんを責める事もできるんだろうけど。


 母さんには、母さんの想いが、事情が、あるし。


 あたしも。


 あたしの父親みたいに、全てを投げ出して、逃げ出したい気持ちもあるけど。


 上谷さんの件も、含めて。


 前向きに。


 でも、今すぐにでは、なくて。


「だから、一年……シズさんには悪いけど、一年待ってほしい」


 考えて、出した、答えのひとつ。


「一年後なら、先輩たちも大学受験、終わってるだろうし」


 タイミングの、問題。


「あたしも三年になってすぐなら、まだ少し余裕もありそうだし」


 それまで勉強さぼらなければ、だけど、さぼるつもりも、無いし。


「まあ、その時点でいろいろ状況も変わってるかもしれないし、約束はできないけど」

「うん、うん」


 母さんも、一応、納得してくれてるかな。


「それまでには、上谷さんとの関係もどうにかするとして」


 上谷さんを言い訳にして、シズさんたちの願いを断ることも、できなくは、ない。


 逆に、シズさんたちの事を理由にして、上谷さんの話を断ることも、できる。


 上谷さんに全てを打ち明けて、シズさんたちと一緒に、って、手も考えられなくは、ない。


 いろんな手段、手法、手立てが、考えられるけれど。


 あたしひとりで決められる事でも無い部分も、多い。


 でも、もうひとつ。


 あたし自身の、希望。


 それを、ちょっとくらい、我がままを言わせてもらっても、バチは当たらない、よね?


「一年後、もし……もし、実際にそういう事する流れになったとして」

「うん」


「もし、そういう事するとして、ひとりづつじゃなくて、みんな一緒が、いいな」

「へ?」


「順番とかも、その時の勢い、流れで決めるとして」

「へ?」


 誰が一番、とか、決められないし、ね。


 それと、もうひとつ。


「母さんにも手伝ってもらうからね」

「へ?」


「あたしも、初めてだし、よくわかんないから、母さんに手ほどき、してもらうことにする。母さん、あたしに色々、教えてくれるんでしょ」


 でも、何やら、母さん、うろたえた様子で。


「あ、いや、その、えっと、あの……親子でそれは、ちょっと、いえ、かなりマズいんじゃないかしら?」


 ん?


「さすがに、親と子でって言うのは、いくらなんでも……」


 ちょい待ち。


「ん? 何か勘違い、してない?」


母さん(わたし)が真綾に手取り足取り手ほどき、するんでしょ?」

「うん」

「だからそれはさすがに色々まずいんじゃないかなーって」


 あー。


「いやいや、母さん、勘違いしないで? 母さんには同席してもらって、いろいろアドバイスを貰いたい、ってだけだから、ね? 雪人さんも最初は雪枝さんと美里さんに見守られながらって言ってたし、そんな風に」


「あ、あぁ、そう、そうだったわね」


 ご理解いただけましたでしょうか?


「まぁ、いずれにせよ、具体的な話は、一年後ってことで。あたしの希望は、そんな感じ。それがダメならこの話は無かった事に」


「わかったわ。皆さんにも話してみるわ」


「うん、よろしく」


 いずれ。


 母さんを通じてではなく、みんなと直接、いや、母さんも交えて、か。


 話を煮詰めた方がいいとは思う、けどね。


 上谷(かみや)さんの事も、あるし。


 付き合うにせよ、付き合わないにせよ。


 いずれ、この件も話さなきゃいけないだろうし。


 なんか、黙っていても彼女には、すぐにバレそうな気が。


 思いっきり、する!


「じゃあ、そんな感じで、よろしく、ね。母さん」

「ええ、わかったわ」


「それじゃぁ、おやすみ」

「おやすみ、真綾(まあや)


 さー。


 少し逃げ道は用意したとは、いえ。


 その逃げ道も、確実にせばまって来た、よねぇ。


 ある意味、自分で自分の首を絞めまくってたりもします、けど!


 さて、さて。





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