表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
玄関ダッシュ五秒の女子高にオレひとり  作者: なるるん
最終章:あたしの未来、オレの未来
333/349

第333話:雪人さん



 雪人さんに、メッセージを送ってみたところ。


 ほどなくして、返信が、届く。


『こんばんは。どうかした?』


「実は……」


 簡単に、事の次第を、と、少しづつ説明を送りはじめたら。


『あぁ、ごめんね、うちの母さんたちが』


 って。


 どうやら。


『なんかみんな集まってコソコソやってたから、アカネを問い詰めて聞いちゃった』


 とのことらしく。


「あ、それなら話は早いですね」


『通話にしようか。テキストだと大変そうだ』


「そうですね、すみません、ありがとうございます。でも、時間大丈夫ですか?」


 すでに、結構いい時間。


『ん、大丈夫』


 そんな流れで、雪人さんと通話で。


 まず、アカネさんから聞いたと言う話を確認。


 すると、母さんから聞いた内容の通り。


 個人情報(プライバシー)何処行った!?


『ごめんね、ほんと……』

「雪人さんはなんにも悪くないですよ」

『いやぁ、なんか、ボクの二の舞になってる感じがしてさぁ』

「え?」


 聞けば。


 状況は少し違うけど。


 雪枝さんと美里さんにアカネさんとの結婚、子作りを、せかされて。


 高校生時代に、わりと強引に話を進められた、って。


『ボクが渋ってたら、母さんたちとアカネが同意書とか作ったりしてさ、なんか無理やり合意させられたんだよねぇ』


 なるほど。


 例の同意書はそうやって作られた、と。


 でも、無理やりって、いいの?


『あぁ、そういう意味で、ボクの女装ってさ』


 雪人さんが、女装をはじめた、きっかけ。


『母さんの会社でモデルのアルバイトしてる時は仕事って割り切ってたんだけど』 


 それが、まさに。


『男のままだと恥ずかしいところが、女装したら少し緩和されるって気付いて』


 ふむふむ。


『もっと女性に寄せてみようって、下着も女性用を着けてみたり、例の上げ底とか自作したりして』


「あれって、雪人さん手作りのオリジナルだったんですね」


『うんうん。最初は手作りだったよ。試行錯誤していくつも作って』


「最終的にはそれを売り出すまでになった、ってことなんですね」


『うん。今やってる女装ショップの方は、完全にその趣味の延長でね』


 すごーい。


『そうだ、それで思い出した。今度、例の上げ底の新タイプの開発やってるんだけど、真綾(まあや)ちゃんにも協力してもらおうって思ってたんだ』


「どんなのです?」


『あれって、内側はなんとなくそれっぽい形にしてるけど、人によって体形も違うからフィット感も違って来るんだよね』


「そうかもしれませんね」


 あたしの場合、そこそこ、フィットしてる感じだけど。


 言われてみれば、少し浮いてるところもある、かな?


『だから、その人の体形を3D測定して、ピッタリ合うよう加工するサービスを考えてるんだ』


「うわ、それ、すごく良いですね!」


 って。


『あ、ごめん。なんかすっごく脱線しちゃった。そっちの件は、また後日、アルバイトの時にでも』


「あはは、はーい」


 確かに、肝心の、話が。


 でも、雪人さんご自身の話も興味深いし、面白い。


『話を真綾くんの戻すと……』


「はい」


『真綾くん、すっごい、モテモテだね』


「あー、いやぁ、まぁ、そのぉ……」


 何と言いますか。


『アカネから聞いた話だと、ハーレムってわけでもなさそうで』


 うん。


 なんか、恋愛とか、結婚とかすっ飛ばして、いきなり子作り、だもんね。


『あくまでも、ボク個人の意見だけどね』


「はい」


『端的な話、女性には逆らわないのが、身のため、かな』


「はい?」


『もちろん、嫌なことは嫌だって言っていいと思うけど』


「はい」


『ただ、女性に恨まれたら、怖いよー』


「ひっ……」


 そっか。そっか。そうだよね。


 それって、逆恨みなのかもしれないけれど。


『どこまで譲歩して女性の願いを聞いて、答えてあげられるか、って』


「あぁ……はい」


『そのあたりが、男としての器になるのかなぁ、なんて思ったり思わなかったり』


「ぶっ、何ですか、それ」


 思うのか、思わないのか。


 漫然と、思うような、思わないような。


 少しあやふやだけど。


『完全には無理だけど、女装して女性の気持ちを(おもんばか)って』


「それは、なんとなく、わかります」


『うん。その状態で歩み寄れば、きっと、ね』


「はい、そうですね」


『ボクとは少し……いや、だいぶ状況が違うみたいだけど』


「あはは、そうですよね」


 雪人さんの場合、相手はアカネさんひとり。


 あたしの場合は……。


『実際問題、大変だとは思うけど、ある意味、他の男からしたら、うらやましい限り、じゃないかな?』


「うっ……雪人さんもそう思います?」


『んー、ボクはちょっと違うかなー。大変だとは思うけど、うらやましいとは思わないよ』


「アカネさん一筋、ですね」


『うん、まぁ……ね』


 うはぁ。


 おのろけ、って、ヤツかな?


 そんな感じで。


 雪人さんと、遅くまで。


 (くだん)の話と、少し脱線した話も交えながら。


 例の同意書に絡んだ貴重な話とかも、聞かせてもらって。


 なんとなく。


 気持ちも晴れて、多少、整理も出来た、かも?



 かも?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ