表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
玄関ダッシュ五秒の女子高にオレひとり  作者: なるるん
新学期・新八時間目
324/349

第324話:『まきばのみどり』ちゃん



上谷(かみや)()()()()()()()です』

 なんか、そう聞こえた、ような?


 先輩たちと、交互に顔を見合わせて。


(え? 何? すご?)

(変わった名前ですわね)

(ふむ、どんな字書くんでしょうね)

(訊いてみる?)


 なんて感じで、また、視線と表情だけで、会話。


 成り立ってるかどうかは、不明ながら。


 大筋では、合ってそうな気はする。


 気になるし、なんで? って、訊いてみたくなったとしても。


 他人(ひと)の名前をとやかく言うのは、マナー違反。


 だよね。


 とか、思ってたら、エリ先生が、助け船。


「じゃあ、みんなの名前がどんな字なのか、黒板に書いてみましょう」


 そう言って、エリ先生は席から立って。


 黒板に向かって、チョークを手に。


「先生の名前は、こうよ」


 カキカキ。


『沢田絵里』


 おぉっ。


 先生の名前、エリは、絵里だったのかぁ。


 って、知ってたけどね。


 続けて、先輩方にバトンタッチ……ならぬ、チョークタッチ?


 トントントン、と、三人続けて。


『大里さくら』

『中原つぐみ』

『小坂ミリィ』


 先輩方は、まんまでしたね。


「ほい、おかーさん」


 金髪子先輩からチョークを受け取って、あたしも。


『園田真綾』


「読み方もそうだけど、書くとますます女子だよねぇ、おかーさん」

「入試の時に性別書く欄が無くて、女子に間違われた説もあり、さすがお母さん」

「名は体を露わにしていますわ、お母様」


 その通り、なんですけど、先輩方、言い方!


 一年生がキョトンとしてますやん。


 さて、お次は……七ちゃんかな。


「じゃあ、七種(さいくさ)さん」

「あ、はい」


 チョークを七ちゃんに渡して、と。


『七種香』

『九重悠』


 七ちゃんから九ちゃんは、ささっと書き上げて。


「えっと、じゃあ、下谷さん、よろしく」

「はーい」


『下谷緑里』


「はい、上谷さん」

「はい」


 チョークが手渡されて、いよいよ?


『上谷牧乃緑』


 あ……漢字で書くと、なんかいい感じ?


 いや、洒落じゃないけど。


 読むと。


『まきばのみどり』


 そんな、上谷さん。


 チョークを持って、立ったまま。


「あー、えっと、訊かれる前に話しちゃいますけどー」


 語り出したっ!?


 でも、みんな訊きたいだろうし。


 ここは、黙って聞くべし。


「おじいちゃんおばあちゃんが牧場やってましてー、なんか、初孫だーめでたいぞー、とかって勢いで付けられちゃったんですよー」


 地味に軽いような……。


「小学生の頃は、この名前でイジられて、イジメられたりして……」


 げっ。


 なんか、開いちゃいけないモノを開いてしまったような?


「特に男子から超絶イジメられまして」


 あぁあ。


 これは、わかる。名前でイジられるのは。


 あたしも、結構、イジられたからなぁ。


「あたしはこの名前、すごく気に入ってて、自慢なんですけど」


 うんうん。


 それも、わかる。


 けど。


 あたしも含めて。


 茶々やら合いの手を入れる隙も根性も、無く。


 上谷さんの話を、聴くしかない。


「さすがに男子が怖くなりましてー、中学も高校も女子校に通わせてもらうことになったんですー」


 おそらく。


 名を名乗れば、こうなる事は、彼女の中で織り込み済みで。


 先輩たちのような、男性恐怖症とも言える、トラウマも含めて。


 そんな説明も、もう、何度もやって来てたんだろうなぁ、と、思われる。


 そんな、上谷さん。


「下谷さんも、似たような感じなんだよね?」


 しれっと、下谷さんに、話を振って。


「はい、わたしも、名前とは別で、その、えっと……体形の事で小学生の時に男子にイジメられて、一時期不登校にもなったりして、中学高校は女子校にしてもらったところは、上谷さんとだいたい同じですね」


 なるほど。


 が、故に。


 この『八時間目』で。


 男性に、慣れるようになれるか、どうか?


 今のところ。


 あたしや、七ちゃん九ちゃんとは、まだ直接的な会話や接触は無いとして。


 んー。



 大丈夫だろうか……?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ