第321話:同意書は却下されました
新学期、二年目の学校生活が始まって。
登校時に、一瞬間違えて一年生のフロアまでのぼってしまいそうになったりしつつ。
クラス替えがあったものの。
大半は、一年の時のクラスメイトだったり。
あたしが有名人だったりするので、新しいクラスメイトとも難なく。
はぁ、やっぱり、入学当初とは、ずいぶんと環境が変わった、かな。
いや、あたし自身も、ずいぶんと変わった、かな。
そして、変わらないもの。
「うぅ、お手洗いは結局、ココかぁ……」
来客用の、お手洗い。
新しく作られたところは、新入生用って事で、あたしとは少し違っているからだとかで。
あたしは、従来通り。
少し近くなるかと思ってたけど。
まぁ、フロアひとつ分、近くはなってるし、二年は二組になったので、ひと教室分も、近くなってる。
微々たる?
それはいいとして。
八時間目の、方は。
「例の同意書のこと、聞いて来たわよ」
エリ先生。
週末の休日に、母さんと一緒に雪江さん、美里さんのところに行ったみたい。
「くわしく」
前のめる、先輩方。
エリ先生が、聞いて来たと言う内容は。
やっぱり、雪人さんとアカネさんが若い頃に作られたらしく。
奥手だった雪人さんを納得させるために作ったんだとか。
「結論的には」
話の最後に、先生は。
「こんなもん、学校で使わせるわけにいかないでしょ、って事で、没収ね」
「ですよねっ!」
先輩たちに睨まれますが、ここは、先生に、同意。
「えー、女子校の悪ふざけ程度だから良いって言ってたじゃーん」
「ですです、ちょっとした悪戯ですよ」
「内容的にも特に問題があるとは思えませんわ」
先輩たちの反論に、しかし先生は。
と、言うか、先輩たち、すんごく大事なこと、お忘れのようで。
「完全な女子校で、女同士ならまだしも、一応、真綾は男の子なんですからね」
「ですよねっ!」
また先輩たちに睨まれます。
「そもそも男女のスキンシップに慣れようって話なのにー」
「それを合理的に、同意してって事なのに」
「ですわですわ」
先輩たちのさらなる反論にも、先生は。
「来週から新入生も参加するんだし、みんなで出来る事を考えなさい」
あ、決まったんだ。
「流されたー」
「ひどい」
「一年生も交えてとなると……何がありますかしらね」
ぱっつん子先輩、切り替え早いですね。
金髪子先輩とおさげ子先輩は微妙に後ろ髪?
そんなおさげ子先輩が。
「学校外で使う分には問題ないでしょう」
とか、言っちゃうもんだから。
「頼むから問題を起こさないでよ……」
エリ先生も、ちょっとご不安。
「しょうがないなー、一年生かー、七ちゃんと九ちゃんだっけか」
金髪子先輩も、一応あきらめてはくれたみたいだけど。
何か悪いコトを考えてるような気は、する。
おさげ子先輩も、しかり。
「七種さんと九重さん、だね、あ……」
「九重……そういえば」
あ。
ぱっつん子先輩も気付いたっぽけど。
あぁああ?
あたしも気付いた。
『九重』って。
「そうね、沙綾おね……園田さんのお母様の……」
皆まで言わずとも。
お花見バーベキューの席で、明かされた、母さんの、過去。
母さんの、元の、家。
でも、確か。
「九重の家って、相当大きいみたいだから、直接の関係はほぼ無いんじゃないですかね?」
「そうね、そうだと思うし、気にしない方がいいわね」
エリ先生や、あたし的には、少し気になる、引っかかるところもあるけど。
エリ先生のおっしゃる通り。
あまり気にしてもしょうがない、かな。
世間は、広いようで、狭い。
なんて。
「あのふたりは確定として、女子はどうなったの?」
そうそう、トランスジェンダー女子だけだと、先輩たちが来れなくなったら、女子が居なくなってしまうから。
「ふたり、貴女たちみたく中学からずっと女子校で、男が苦手だって子に来てもらうことになったわよ」
ほぅほぅ。