第308話:ブラジャーのうた
やっぱり、誰にも相談なんて、出来ないよねぇ。
女の子との、触れ合い方に、ついて、なんて。
自宅に帰り着いて、お風呂でそんな事を考えながら、ぼぉっと。
うん。
やっぱり、恋人とか、そういう関係なら、いざ知らず。
友達とか、先輩とか、知り合いってレベルじゃ、そこまでは、ね。
それでも、先輩たちは、何故かノリノリで、そういう事をしよう、なんて。
さすがに学校じゃ、色々問題あるだろうし。
昨日は先生も居なかったから、先生に話したら、ストップかけられるのは目に見えてるよね。
うんうん。
ここは、無難に。
八時間目のカリキュラムも。
新しい一年生も入って来る事だし、色々と変わって来るよね。
先輩たちは、夏まで、って言ってたから。
トランスジェンダーなあの子達の他に、先輩たちのような『男子に慣れない』別の女の子も、参加することになるんだろうか?
あの子達以外の事は、先生からは何も聞いてなかったし。
今の先輩たちみたいに、グイグイな感じなのか。
最初の頃の先輩たちみたいに、男子に引き気味なのか。
今まで、男子と縁がなかった女の子なら、後者だろうけど。
逆に、興味津々でグイグイ、なんて可能性も、ある?
まあ。
なるようにしか、ならない、よね。
新学期、新学年。
あと、数日。
「くしゅんっ」
うぅっ。
お風呂であったまってて、寒くはないから、誰か、ウワサしてる?
「金髪子先輩とシズさん、かなぁ?」
一番可能性は、高い。
あとは、実家に戻ったユイナおねえちゃんが、おじいちゃんおばあちゃんと、あたしの事を話してる、とか。
かな。
さて、ぼちぼち、あがろう。
身体を拭って、先ずは下着、下着。
お休み用のハラマキショーツを履き履き。
それから。
「ブっラジャー、ブっラジャー、ブラブラじゃー」
ふっふーん。
「おっ休み用のー、ナイトブラー」
ふっふふーん。
「あら、真綾、まだ入ってたの? って言うか、何変な歌、うたってるのよ」
あ。
「母さん」
長湯しすぎたか、母さんがお風呂場にやって来て。
「歌なんか歌ってないよ?」
「歌ってたわよ」
「へ?」
「なんか、ブラジャーの歌?」
はっ!?
「あ、やー」
無意識に、口ずさんでいたの!?
あうぅ、恥ずかしい……。
身内……母さんで、よかった?
てことで、ちゃちゃっと。
パジャマ代わりのスウェットの、下だけ履いて。
「お、お先にー、ごゆっくりー」
母さんと、入れ替わり。
お部屋に、退避。
うわぁ。
なんか、地味に、ヤバい……。
気を付けないとなぁ。
ひと晩ぶりの、お部屋で。
のんびりと、携帯端末で動画など、鑑賞。
してたら。
コンコン、と、部屋の扉がノックされて。
「真綾、ちょっといいかな」
母さん?
しか、居ないんだけどね、この家。
「なぁに? いいよ」
「お邪魔するわね」
母さん、来訪。
「なぁに? 母さん、どうしたの? 改まって」
「えへへ」
ホンダさんの事もあって、落ち込んでるかなと思ってたけど。
なんか、思っていたより。
妙な、明るさ?
カラ元気とも、取れなくもないけど。
はて?
「あのね、えと、真綾は、新しいお父さんができるのと、もうひとりお母さんが増えるのと、どっちがいいかな?」
は?
「は?」
んー。
お父さん、父親は、まあわかるとして。
もうひとりお母さんが増える、って。
あぁ、雪枝さんと美里さんの、あの、入れ知恵。
『女同士もあり』
って、やつかー。
そういう意味では。
「どっちも何も、母さん次第だし、どっちでも、母さんの好きな方でいいんじゃない?」
「一応、ほら、だって、真綾の親にもなる訳だし」
それは、まあ、そうなんですけども。
入れ知恵元の、雪枝さん家族を、見る限り。
うん、とっても幸せそうだし、仲良さそうだし。
悪い気は、しない、かも。
それに。
「うーん」
今さら、父親って言うよりも。
「母さんがもうひとりの方が、まだマシ、かな?」
「そう、そうよね、真綾ならそう言ってくれると思ったわ」
さいですか。
「えへへー。それでね、あのね、実はね」
はい?
まだ何か、ございますでしょうか?
お母さま?
「エリ先生と、お付き合いする事になったからー」
はい?
※今月は、29日と30日が無いため、話数と日付の整合を取るため、この後、続けて2話分を1時間毎に公開しますw