第303話:かーさんの母さんへのお土産
神社で、お守りの自動販売機。
なぜか、あたしは『安産祈願』で、先輩たちはみんな『子宝祈願』とは、これ如何に。
確率の偏りが、激しすぎて、他に何が出てくるのか?
もう一度だけ、お試し。
シズさんへの、お土産って体で。
なぜか、あたしが、代表で。
三列、二段の、ガチャガチャの。
「それじゃあ、右下でいきます」
さっき、四人が選ばなかった、ふたつの内の、ひとつ。
五百円玉を、セットして。
「行きます、ね?」
「いけー」
「何が出るかな?」
「また子宝か安産だったら笑いますわよ?」
あはは。
さすがにそれは。
ない。
と、思いたい。
ドキドキ。
そして。
ガチャ、ガチャっ。
ダイヤルを、回して。
コロン、と、出てくるカプセルを。
金髪子先輩が、取り出して。
「お、紫色かー。シズにお似合いの色だなー」
半分透明のカプセルから見える、お守りの色。
確かに、濃い紫色の渋い感じが、シズさんっぽいかな?
ただ。
書かれている文字は、開けてみないと。
って、事で。
かぽっ、と、金髪子先輩が、カプセルを開けて、中からお守りを取り出して。
「じゃーん、どやぁ!?」
自分では見ずに、あたしたちの方へ向けて。
「ぶっ!」
「ぶほほっ!」
「あちゃぁ……」
なんでやねん。
「ん? その反応は……」
金髪子先輩も、自身の目で、そのオチを確かめれば。
「ぶっ!」
まぁ、吹き出しますよね。
『子宝祈願』
もう一度。
なんでやねん。
って、思わず、ガチャガチャの機械にツッコミを入れたくなりますよね。
「いや、これ、ホント、安産祈願と子宝祈願しか入ってないんじゃない、これ?」
金髪子先輩も爆笑しつつ、ガチャガチャの機械に、ツッコミ。
もはや、安産祈願がもう一個入っているのかさえ、疑わしく。
透明な機械の窓から中のカプセルが見えるんだけど、書いてある文字が巧妙に見えないようセットされているようで。
何が入っているのかは、本当に引いてみないと、わからない。
関係者に聞いてみたいところでもあるけど。
今日は、社務所も閉まってるし。
ひと気も無いので。
「あはは、まあ仕方ない、帰ろー帰ろー」
真偽を確かめるために、もう数回? なんて無駄遣いは、せず。
あ、でも。
「すみません、うちの母にもお土産、いいですか?」
この手があった。
「お、かーさんの母さん用かー」
「母さんの母さんって、おばあちゃんになっちゃうじゃん」
「沙綾さんがおばあちゃんって、怒られますわよ?」
あはは。
あたしに子供が出来たら、事実上、おばあちゃんになっちゃうけど。
それは、まだ、遠い未来の、お話だし、ね。
さて、それでは。
「よぉっし」
両替機で、千円札を五百円玉に両替して。
「いきますっ」
左下。
誰も選ばなかった、最後の一台。
えいっ!
ガチャっ、ガチャっ。
ころん。
カプセルの中のお守りの色を見ると、淡い、桃色。
風合いは、とても良い感じ。
だけど……。
「さて、さて!?」
「何がっ」
「どきどき」
カプセルを、開けて。
透明じゃない方に、セロテープで貼り付けられているお守りを、掴んで。
そのまま、はがして。
自分では文字を見ず、そのまま。
「じゃーん!」
先輩たちの方へ、掲げれば。
またまた。
神社の境内に、響き渡る。
先輩たちの、大爆笑。
確かめるまでも、なく。
これ。
あかんやつや。
でも。
どっちだろう。
『安産祈願』か、『子宝祈願』か?
はて。
答えは!?
まぁ、どちらにしても、母さんへのお土産としては。
適切なのか、不適切なのか。
これはもう、あたしが将来、結婚したら相手の女性にあげるしかないかなぁ。
母さんが先か。
あたしが、先か。
どっちにしても、そんな未来は、まだまだ見えないんだけど、ね。




