第298話:シズさん不在で先輩たちと朝食
別荘のキッチンで、ひとり、朝ごはんの準備。
おそらく、シズさんが朝食用にと、お米は仕込んでくれてたみたいなので、すでに炊き上がってる。
これもシズさんが準備してくれてたんだと思うけど、お味噌汁の具材もあったので、みんなの分も含めて先に作っておこう。
おかずは冷蔵庫の中に残っていた昨日の食材とかもあわせて、簡単に。
なんて。
鼻歌交じりに、お料理。
していたら。
「あぁ、いいにおーい……朝ごはんか、って、あれ? 真綾?」
おさげ子先輩、登場。
予想よりずっと、早かったですね。
リビング、ダイニング、キッチンが、一緒になった、とっても広い部屋なので。
お料理の香りもリビングまで届いたらしく、おさげ子先輩も気付かれた、模様。
「おはようございます、ツグミ先輩。シズさんまだお休みみたいで」
「おはよう、真綾。そっか、シズさんまだ寝てるのね……珍しい」
「ツグミ先輩も、食べます?」
「もちろん。ミリとサクラも起こしてくるわ」
んじゃ、おかずの方も先輩たちの分も、と。
シズさんがわからないけど、シズさんの分も作っちゃうか。
朝、食べなかったら、お昼に温めてもらおう。
おさげ子先輩は、お手洗いに行ってから、部屋に戻って。
まだ眠そうな金髪子先輩とぱっつん子先輩を連れて来る。
「おはまーや、シズ、まだ起きてないの?」
金髪子先輩も、シズさんが起きてない事に、疑問。
「そうみたいですね、見てないんです」
起こすにも、そもそも、どの部屋で休まれてるか聞いてなくて、部屋がわからず。
「ミリ先輩、ちょっと見てきてもらえます?」
「わかった、行ってくる」
てこてこ、と、二階へ上がる、金髪子先輩。
さすがに、金髪子先輩は、シズさんの部屋、知ってるよね。
わりとすぐに戻ってきて。
「ダメだ、居ないのか、ぐっすり眠ってるのか、わからん……」
あらま。居ないって事は、無いと思う。
出かけるなら、声をかけるか、何かメモとか、残してくれてる筈だろうし。
「仕方ない、後でもっかい行ってみる」
シズさんの事は少し後にするとして。
先輩たちも、お手洗いから、洗顔などなど、朝のルーティンをこなして、お着換えのために部屋に戻る。
その間に、あたしは先輩たちの分も含めて、朝食の準備、準備。
ダイニングのテーブルに朝食を並べると。
先輩たちも着替えて来られて。
「真綾の朝ごはん~、って、朝ごはんは初めてか」
「あはは、そう言えばそうかもですね」
お昼や夕飯は、わりとありましたが。
さすがに朝はご一緒する事も、ほぼ無く。
夏合宿の時も、お手伝いはしたけど、シズさんと母さんが作ってたし。
「それにしても、シズさん、起きないですね」
「あれから何度かノックして呼びかけてみたけけど、反応なし」
「とりあえず、先に食べちゃいましょう」
金髪子先輩の、いっただきまーす、の合図で。
四人で、朝食、ぱくもぐ。
「先輩たちも、あれから結構、遅くまで起きてたんじゃないですか?」
ある程度、食を進めつつ、疑問と言うか、イヤな予感の正体を、探ってみる。
「あぁ、まぁねぇ、なんだかんだ、おしゃべりしてたー」
金髪子先輩の回答の、通り。
これはもう、完全に予想通り。
「シズさんは、一体どうしちゃったんでしょうか」
もうひとつの、疑問。
「それなー」
金髪子先輩たちにとっても、疑問、疑惑。
「多分さー」
金髪子先輩の、推測。
夕べ、最後に、金髪子先輩がシズさんの携帯で検索して表示していた、画像。
写真だったそうだけど。
それを、食い入るように、見られてた、シズさん。
声をかけても、少しうわの空で、画面に集中してたから。
「そんな感じで、明け方くらいまでネットに夢中になってたんじゃないかな?」
とのこと、らしい。
それは。
うん、なんとなくあたしも、そうじゃないかとは、思ってた。
さらに、昨日の話の流れから、どんな画像だったかも、なんとなく想像できる。
いや、あんまり想像はしたくないんだけど。
シズさん……。