第288話:お嬢様方、そこまでです
「サクラ様、お手伝い致します」
「ありがとう、シズさん」
ソファの後ろに居たぱっつん子先輩が。
ソファの前に回り込もうとして、邪魔なロゥテーブルをどかそうとすると。
何処に居たのか、シズさんがすぅっと、登場。
多分、部屋の隅に居たんだろうけど。
気配が、気配が。
テーブルの短い辺を、ぱっつん子先輩とシズさんがふたりで持ち上げて。
するーっと、横にずらすと、前に空間ができて。
「それでは」
正面に、ぱっつん子先輩が。
正座!?
金髪子先輩と、おさげ子先輩は、相変わらずソファの横に座っていて。
あたしのシャツの裾をめくり上げてる。
ぱっつん子先輩が、足は正座のまま、上体だけをこちらに向かって。
「はうっ」
左手を、あたしの膝というか太ももというか、足に置いて。
右手を伸ばして。
ぺとっ。
「はうっ、はうっ」
すり、すり。
「ふむふむ……」
何を納得されたのか、ぱっつん子先輩は、ふむふむ言いながら、ぷに、ぷに。
「さ、サクラせんぴゃぃ……」
さ、さわり方が、前のふたりより、何か、こう。
えーっと。
あぁ、ひゃ、ひゃぁ……。
「これは、なんとなくミリィのおなかに似てませんかしら?」
「あー、なんとなくわかる、その感じ」
すりすり、ぷにぷにを続けながらの、ぱっつん子先輩に同意される、おさげ子先輩。
おふたりの、そんな感想に。
「そぉかなぁ?」
金髪子先輩が、自分のパジャマの裾に手を入れて。
自分のおなかを。
すりすり、してるのかな?
と、言うか。
なにげに、金髪子先輩のおなかを、すりすりぷにぷにされたことあるんですね、ぱっつん子先輩、おさげ子先輩……。
あぁ、そっか。
一緒にお風呂に入った時とか、一緒に寝る前とか、時々。
そういう『ふれあい』と言うか、『じゃれあい』みたいな事、されてるのかなぁ。
なんて。
無意識にそんなシーンを、ちょっこり、想像してみたりしたら。
事態、悪化!?
「あっ」
思わず、びくん、となって、声も出ると。
「? どうかされまして? 痛かったですかあぁあっ!」
驚いたぱっつん子先輩の左手が。
あたしの足からするっとすべって、落ちて。
上体を左手に預けていた、ぱっつん子先輩の上半身が。
そのまま、カクン、と、あたしのふとももに。
その状態において、ぱっつん子先輩の、頭と言うか、おでこが。
「ぎゃんっ!」
「サクラ様っ!」
あたしが叫ぶのと同時くらいに。
シズさんが、飛んで来て。
ぱっつん子先輩の上体を抱え上げて、さっと、あたしから遠ざけてくれた。
「あいたたた……何やら、額に、何やら、固いモひょひゃあああひじゅひゃんにゃにゅよしゃへまひゅひょぉ~」
さらに、何か言おうとしたぱっつん子先輩の、頬を。
シズさんが両手で両側からつねってひっぱって。
「サクラ様、サクラ様は何もお感じにならなかった何も触れなかったいいですねサクラ様」
あぁ。
ぱっつん子先輩が金髪子先輩によくやってる、ほっぺたつねりは、シズさん伝授だったのかな?
そしてさらに。
「固いもの……」
「固いモノ……」
左右から、ステレオで聞こえて来る、声。
そして、怪しげな、視線も感じる。
でも、それが、急に。
「いひゃいいひゃいひゃめへぇひひゅひゃふひゃあ」
「はい、お嬢様ももう終わりですおねんねしましょうねー」
シズさんが、ひょいっと金髪子先輩を抱き上げて、床に座らされたぱっつん子先輩の隣に。
ぽいっ。
それから、すぐにこちらに向き直ったシズさんの視線の先。
「あ、や、はい」
おさげ子先輩は、シズさんの攻撃を受ける前に、自首する形で。
ぱっつん子先輩、金髪子先輩に並んで自主的に、お座り。
「お嬢様方、今日はお疲れでしょう、もうお休みください」
シズさんに促されて、立ち上がり、リビングを後にする、先輩方。
「おやすみ真綾」
「おやすみ」
「おやすみなさいまし」
た。
たすかったぁ……。
と、思ったら。
「真綾様は少しお残り下さい」
え?