第281話:母さんの旦那さん、つまり、あたしの父親候補って
雪枝さんと美里さん。
母さんよりも、少し年上さん、ってところもあり。
母さんの身の上も、聞いてもらいつつ。
おふたりから、母さんへの、アドバイスは、まさかの。
『相手が女性もあり』
とのことで。
レズビアン、とか、百合? でしたっけ。
女性同士、同性同士の、って。
実際、雪枝さんと、美里さんの関係性が、その通りだとか。
ただ、社会的には、整備されつつあるとは、言え、まだまだ困難も多いそうで。
母さん自身に、そのつもりはあまり無いみたいだけど。
そもそも、男性が苦手ぎみ、と言うところもあって。
「雪人さんや真綾みたいな男性なら、とっつきやすいかも、ですね」
なるほどー、じゃ、無い気も、しなくは、無いですけど?
「あはは、ボクはダメですよ。アカネに怒られ……るだけじゃ済みそうにないですね」
確かに。
アカネさん、ぷっくりほっぺ。
「雪人さん、じゃなくて、雪人さんみたいな、ね。女性の事をよくわかってくれそうだし、安心できると言うか、気兼ねなく接する事もできるかなぁ、って」
母さん。
なんか、吹っ切れた感も。
あんなことがあった直後と言うのに。
いや、あんなことがあった直後だからこそ、かな。
「そうよ、だから真綾のお嫁さんになる女の子も、幸せかも」
ぽん、と。
あたしの頭にてのひらを、置いて。
「ね?」
ぽんぽん、と。
「うぅ、やめてよ、母さん」
飛び火、怖い。
それでも、場は、あはは、と、比較的和やかに。
そこへ、アカネさんが、さらにネタ投下。
「あー、でも、雪人くんみたいな恥ずかしがり屋さんだと、アッチ方面で苦労するかもですよ」
「ちょ、アカネ、それはもういいって」
あはは。
でも、ちょっと。
あたしも、その傾向は、あるなぁ、って。
なんとなく、理解してる。
女の子には、触れちゃいけない、とか。
触れるのが、恥ずかしい、とか。
突然、ふと。
球技大会で、キャッチャーをやった時。
最後のバッターを三振で打ち取った、ピッチャーの娘に。
抱き着かれたときの、こと。
あぁ、あの時も、硬直して、動けなくなったわよねぇ、って。
思い出したりして、ちょっと、ほっぺが赤くなる。
「でも、そうすると……」
雪人さんが、何か気付いたようで。
「候補は……レイちゃんとか、川村ちゃん?」
さすがに、あたしと母さんは実の親子だし。
この場で言うと、そうなるよね。
いや、ならない?
「あと、アキラも候補かな?」
雪人さん……。
「んー……パパぁ、なぁにぃ?」
あ。
うとうとアキラくん、雪人さんに揺らされて、お目覚め?
「いや、アキラだとさすがに歳の差ありすぎでしょ」
アカネさんの、ツッコミ。
何気に、このご夫婦も、漫才風味あるよね。
また、場が笑いに包まれる、けど。
よくよく、考えてみると。
母さんとホンダさんの、歳の差を考えると。
母さんとアキラくんの歳の差って。
だいたい同じくらいじゃない?
って、どひー。
なんかものすごい事に気が付いてしまったけど。
空気を読んで、それは語らず、蒸し返さず。
おじいさんと若い女性、と。
若い女性と幼子で考えると。
アキラくんが、あたしの父親に!?
うん、無い無い。
無い、よね?
でも。
おそらく、だけど、母さんの中に。
何かが、生れたんじゃないかな。
そういうヒトを、探す、きっかけ、みたいな。
そうすると。
将来的に、あたしの父親が。
女装趣味の、男性って可能性も。
まぁ。
親子で、女装して。
三人、女の恰好で、生活してる、お出かけしてる、そんな姿を想像してみて。
改めて、自分の姿を、見つめてみて。
うん。
アリ、かな?