第279話:雪枝さん美里さんの馴れ初めと雪人さんの女装
雪枝さんと、美里さんが。
軽く、唇をあわせて、すぐに離れて。
でも、腕は組んだ、まま。
「むぅ、お肉の味」
「もぉ、色気ないわねぇ」
「あはは」
「んふふ」
あの、えっと。
「それで?」
さすがに、ユイナおねえちゃんも、仰天して、続きを知りたいらしい。
「つまり、そういうこと、よ~」
えーっと。
つまり。
どういう事?
いや、わからなくは無いんだけど。
「女同士も、ありって、こと、ね」
「ね~」
ずばりと言われると。
違和感、ある。
ありまくる。
けど。
ぽかん、としていたらば。
「母さん、その話、しちゃうんだ?」
アキラくんを抱きかかえた雪人さんが、ふらっと現れる。
「んふふ~、ちょぉっとなら、いいかなぁ、って~。アカネわぁ?」
「アカネはあっちで女の子たちに捕まってる。妊娠出産とか子育ての話で盛り上がってるみたい」
雪人さんが示す方。
確かに、アカネさんが女性陣に取り囲まれていらっしゃる。
なるほど、女性ならではの話題かも。
男子チームは、少し離れて微妙に聞き耳を立ててる感じ?
ぉいおい。
「アキラも居るからね、逃げて来た」
そのアキラくんは、お腹いっぱいになって眠くなったのか。
雪人さんの腕の中で、こくり、こくり。
それから。
雪枝さんと、美里さんは、改めて。
自分たちの事を、話してくれた。
曰く。
雪枝さんと、美里さんは、ふたりとも、たまたま、偶然。
男性と結婚はせずに、子供だけを産んで。
自分ひとりで育てたい、と、考えていたそうで。
そして、さらに、たまたま。
ふたりが出産のために入院した病院が、同じで。
同じ日、ほぼ同じ時刻に、子供を産んだ、と。
そんなめぐりあわせもあって、入院中に、仲良くなって。
ひとりで子育てをするより、ふたりで、と。
一緒に住んで、共同生活を送るようになって。
やがて。
「一緒に暮らしてる内に、ね」
助け合いの共同生活から、それは、信頼を経て。
でも、同性同士の結婚は、一筋縄では。
だから。
「それで、ボクとアカネを結婚させて、家族になろう、って事だったらしいよ」
最後、雪人さんが雪枝さんたちの言葉を、つなぐ。
「物心つく前からずっと『二人は結婚するの』とか『孫を作って』とか、言われ続けてねぇ」
あら、まぁ、それは。
「うわぁ、それって、兄妹みたいに育てられて、幼馴染で許嫁……すごいなぁ」
ユイナおねえちゃん、驚愕。
うん、あたしも、驚愕。
「イヤじゃなかったの? 結婚とか、勝手に決められちゃって」
母さんも、雪人さんに素朴な疑問を、ぶつける。
親が勝手に決めた、結婚、とか。
ひとによれば、反対もしたくなる、よね。
「ずっとそう言われ続けてたのもあったし、アカネもボクも、そうなるのが普通なんだって思ってましたからね。全然、嫌じゃなかったですよ」
当の雪人さんは、ひょうひょうと。
でも、だから、今、こうして。
アカネさんと結婚して、アキラくんも産まれて。
幸せそう、だし。
「むしろ奥手な雪人ちゃんに子作りさせるの苦労したもの」
!?
「うわぁ、それは言わないでよ美里ママっ」
美里さんから、突然の、爆弾に、うろたえる、雪人さん。
子作り、とか急に言われたら。
あたしも、ドキっとする。
「そうそう~。超奥手の雪人を~、オオカミさんにするのぉ、すっごく、大変だったの~」
「母さんっ」
あたおたする、雪人さん。
ちょっと珍しい。
「オオカミさんになるどころかぁ、可愛い可愛い女の子にぃ、なっちゃった、けど~」
「ある意味、これが雪人ちゃんのオオカミモードよね」
「うぅ、母さん、美里ママ……」
確かに。
可愛いと言うより、美人さんなんだけど。
照れている姿は、ちょっと可愛い。
「確かに、さっきのヒトじゃないけど……男は、女性には軽々しく触れちゃいけない、みたいな思いがあったから、さ」
少しはにかんだ様子で。
雪人さん。
「でも、母さんたち見てて、女同士ならいいのかな、みたいな感じで、女装したらなんかちょっと吹っ切れたんだよね」
なるほど……。
「もともと、母さんたちの会社のアルバイトで女装はしてたし、ね」
そっか。
なるほど、雪人さんの女装には、そういういきさつが。
「まぁ、それがきっかけになって自分で女装専門ショップとかまで始めちゃったわけだけど、ね」
そこも、少し照れが入って。
ますます、キレイカワイイ、雪人さん。
素敵な、ひと、だなぁ。
<ご参考>
ゲストキャラたちのオリジナルストーリー
★ホンダさん御一行★『バード・ガール~鳥撮り少女』
https://ncode.syosetu.com/n8909ig/
★雪人ファミリー★『百合の母達が子等に乞い願う・ピュア』
https://ncode.syosetu.com/n7694ij/
★三先輩方★※ノクターンR-18作品につき、リンクはできません(笑い
しかも、キャラクターのイメージだけ流用しているので、ストーリーの繋がりはありません。