第278話:雪枝さん美里さんから事情をうかがう
語るは、雪枝さんと、雪枝さんにぴったりと寄り添った、美里さんの、ふたり。
そのふたりから、あたしたちが別荘の部屋に居た時の話を聞かせてもらう。
「……と、言う感じでぇ」
「わりと、って言うか、かなり優柔不断な感じのヒトだったね」
その、内容はと、言うと。
ホンダさんは。
大きく、ふたつの理由で、結婚を渋っていたらしい。
ひとつは、女性恐怖症で、もうひとつは、趣味優先、だとか。
幼い頃に、女の子にイジメられたトラウマで、女性が怖いって。
そんな風には全然見えなかったけどなぁ。
母さんともちゃんと話できてるし、それ以上に三人も女性と一緒に行動してたし。
これはちょっと、微妙。
趣味優先、と言う方が、強い気が、する。
あんな高そうなカメラとか、バイクとか。
それに、趣味に使う時間も。
子供が居ると、自分の自由な時間がなかなか取れなかったりするのは、母さんを見ていて、よくわかる。
「なるほど……女性恐怖症の話はちょっとだけ聞いたことあるけど、確かに、本多さんって、他にもいろんな趣味されてるみたいだし……」
母さんも、雪枝さんたちから話を聞いて、ある意味、納得。
「それで、あの妹さんは?」
「えっとぉ、ホンダさんから色々聞いてる途中でぇ……」
例の、大きな車がやってきた、と。
最初、おばあさん、つまり、ホンダさんの妹さんが降りて来て。
バイクには積みきれないホンダさんたちの荷物を持って来たとのことで。
自分の兄が、雪枝さんはじめ、他の人に詰め寄られているのを、見て、聞いて。
ホンダさんから状況を聞いた妹さんが。
大激怒して、車に乗っていた他の男性を呼び出して、ホンダさんをつるし上げた、らしい。
「あの迷彩服とか、一緒に居たひとたちは?」
「あんまり詳しくはぁ、聞けなかったけどぉ……」
妹さんの会社で、サバイバルゲーム用のグッズを、開発しているらしく。
そのテストを、この近くでやっていたらしい。
サバイバルゲームって、確か、おもちゃの鉄砲で撃ち合うゲーム、だっけ。
その帰りに、ホンダさんたちの荷物を運んで来た、って感じみたい。
「なるほど、それであんな妙な服装だったのね」
「みたい~」
雪枝さんたちのお話が、ひと段落して。
「それにしても……結婚より趣味優先、か……確かに、そういう男、増えてる感じはするなぁ」
ユイナおねえちゃんが、ぽつり、と、感想。
おそらく、大学の、お知り合いの男性とかのイメージかな。
そういった状況は、わかったとして。
雪枝さんが、続けて。
「沙綾さんもぉ、ユイナさんもぉ、いろいろ、あると思うけどぉ……」
母さんが、身を引いた事そのものには、触れず。
「結婚を考えるならぁ、ひとつ参考になるかもしれないお話、してあげるわね~」
「あ、はい、ありがとうございます」
「お、大先輩のありがたいお話かな?」
「うふふ~、ひとつの選択肢として、相手は男だけじゃぁ、無くてもいいかもぉ、って」
しっかりと美里さんと腕を組み、嬉しそうに語る、雪枝さんの、その言葉は、でも。
「え?」
「え?」
「え? それって?」
男だけじゃなくても、いい?
「こういぅ、こと、よぉ」
雪枝さんは、寄り添った美里さんを、抱き寄せて。
そっと、口づけ。
えぇええっ!?