第275話:迷彩服を着たおばあさん登場って何それ一体何事
金髪子先輩の、別荘の一室をお借りして。
園田家の、三人。
少しくつろがせてもらっていたらば。
部屋の扉が、少し乱暴気味に、ドンドンと、ノックされる。
「何かあったのかしら?」
「わたし出るね」
ユイナおねえちゃんが扉を開けてみると。
扉の前に、立つ影は。
シズさん。
「園田様、少々、大変な事になっておりまして……皆さまをお連れしろとのことで」
ユイナおねえちゃんが、扉を開放して、シズさんを迎え入れつつ。
「大変な事、って、何かあったんですか?」
「詳しくは、直接、ご自身の目でご確認頂ければ、と」
では、わたくしは、お先に、と。
シズさんが、部屋を後にされるけど。
一瞬、固まった園田家三人も。
顔を見合わせた、後に。
「行こう、母さん、おねえちゃん」
急いで。
「う、うん」
「何だ何だ、何が起きたってーの?」
部屋に入った時に脱いでいた上着の袖に手を通しつつ。
部屋を出て。
廊下から、階段を、降りて。
玄関から、外に飛び出して。
バーベキューの庭へと、戻ってみたらば。
「何ごとっ!?」
えーと。
確かに、少し大変な事。
状況が、飲み込めないけど。
目に入った状態を、列挙するならば。
先ず、大きな門のところに停まっている、大きな、トラック。
濃い緑色の、ぱっと見、なんとなく、軍用車のようにも、見える。
そのトラックのすぐ横、門の前に。
勢ぞろいして、直立不動の、軍服のような迷彩服を着た、恰幅の良い男性が、四人。
もう、この時点で、『何!?』って感じですが。
さらに。
門のすぐ脇にある、桜の樹の枝に。
ロープでぐるぐる巻きにされたホンダさんが、吊るされてる!?
「本多さんっ!」
そりゃ、何事か、と、母さんも、びっくりして叫びたくなる、よね。
そして、もうひとつ、と、言うか、もうひとり。
「蘭、永依夢、方菜、あんたらもこっち来て土下座しぃ、土下座」
吊るされたホンダさんの足元に、正座する、女の子。
いや、女性?
一瞬、銀髪の外国の少女かと思ったけど。
小柄な、白髪の、老婆?
しかも、後ろに立ち並ぶ男性たちと同じように、迷彩服……。
一体全体、何が、どうして、どうなってるの?
そして。
その迷彩服の白髪老婆に促されて。
横に並んで正座する、三人の女性たち。
そこに相対する形で、ホンダさんたち以外の、あたしたち全員。
さすがに。
唖然、と言うか、呆然、と言うか
きょとん、と言うか、あんぐり、と、言うか……。
「エリ先生、一体、これは……」
すぐ近くに居た、エリ先生に、問いかけてみるも。
「なんでも、あのホンダさんの妹さんみたいなんだけど……」
あ。
って、事は、あの女性の、おばあさん?
そのおばあさんが、小柄なわりに、大きな声で。
「これで皆さんお集まりでっしゃろか?」
お互い、顔を見合わせて、何人かが首を縦に振れば。
「ほな、改めまして。ウチはこのボンクラの妹で、この子の祖母の九重涼子、言います。こんな格好で失礼します」
丁寧な、関西弁で、頭上に吊るされたホンダさんと、隣に正座するあの女性、それから自分の衣装を指差す。
一瞬、言葉遣いから、方菜さんのおばあさんなのかと思ってしまうけど。
どうらやら、あの女性のおばあさん、らしい。
「今日はウチの愚兄と孫が、大変失礼な事をしでかしてしもうて、ほんに、申し訳ございませんでした」
言葉と共に、土下座……。
片手で、隣に座ったあの女性の頭も押さえて。
横目で、それを見た河崎さんと方菜さんも、同じように。
土下座。
後ろに立つ、迷彩服の男性たちも、その場で九十度腰を曲げて、お辞儀。
一瞬。
本当に、何がどうしてこうなったのか。
土下座を続ける、四人の、女性たち。
その後ろ、桜の樹に吊るされた、ホンダさん。
静まりかえる、場。
あたしも、含めて。
突然の事に、どうしていいのやら、完全に、固まってしまう。
そんな、中。
母さんが。
「ここ……のえ……」
ぽつり、零れるように、つぶやく。
はっとして、その顔を、見ると。
大きく目を見開いて、驚愕の、表情。
母さん?