第273話:園田ズルーム
金髪子先輩に案内されて。
母さんと、ユイナおねえちゃんと、別荘の一室へ。
園田家、一時集合。
「じゃあ、少し飲み物とか持ってくるから、おとなしくしててね」
そう言って、金髪子先輩が部屋を後に。
部屋に残る、三人。
ソファがあったので、そこに三人、並んで。
あたしが、真ん中。
右に母さん、左におねえちゃん。
あたしも、少し落ち着いて、涙は止まったみたいだけど。
「ほらほら、真綾、鼻かみなさい」
ユイナおねえちゃんが、備え付けのティッシュを数枚、手渡してくれたので。
目と、鼻をぬぐって。
「ありがと、おねえちゃん」
「それにしてもムカつくなぁ、あの女もだけど、あの男もだよ!」
「本多さんに姪子さんが居るのは聞いてたけど……その子からプロポーズされたとか、わたしも今日初めて聞いて驚いちゃったわ」
うん。
あたしも、初めて聞きました。
「そんなヤツを連れて来るって、どういう神経してんだって話よね!」
あぁ。
なんか、今度は、ユイナおねえちゃんがっ。
「いきなりそんな話を聞かされて、わたしも気が動転しちゃって、つい、カっとなっちゃって……ごめんね、真綾、心配かけちゃって」
そっと、ふんわり。
母さんに、頭を抱かれる。
「それから、ありがと、ね」
母さんの腕の力が、少し強く。
ありがとう、ね。
母さんとあの人の間に入って、ってところ、だよね。
「うん」
逆に。
あたしが、間に入って、突然泣き出しちゃったから。
ヒョウタンから、コマ?
ワタリに、フネ?
なんて言えばいいのか。
タナカラ、ボタモチ、だっけ?
それは、まぁ、どうでもいいや。
「沙綾ねえさん、マジな話、アレはやめといた方がいいよ、絶対」
「うっ……」
ユイナおねえちゃんの、本多さんに対する印象は、最悪?
正直。
あたしも、ほぼ、同意見。
母さんのお見舞いに来てくれたり、悪い人では無いんだろうけど。
なんか、ちょっと、どうよ? って、気もしなくは、無い。
「あれが意図的だとしても、天然だとしても、すんごく微妙だと思わない?」
「うぅっ……」
ユイナおねえちゃんが、母さんを説得する図式。
でも。
母さんの、想いは?
母さんの、意志は?
あまりにも突然すぎて。
あたしもだけど、母さんは、もっと。
多分、ユイナおねえちゃんも。
「まぁ、あのおっさんが沙綾おねえちゃんを選ぶのか、あの女を選ぶのか、ってのもあるかもだけど、さ」
うん。そこ、だよね。
「ずっと保留にされてるって事は、両方選ばないって事もあるだろうし……はっ!? まさかっ!」
おねえちゃんが、何かひらめいた?
「どうしたの? ユイナ?」
「二択じゃなくて、三択とか四択とかだったら!?」
「え?」
「え?」
「あの、もうひとりの子さ、関西弁じゃない方の子。いや、あの関西弁の子も、とかだと、さ」
うわぁ、それは。
母さんも。
その可能性を指摘されて。
「……」
絶句。
からの。
「痛い痛い、母さん、痛いよっ」
痛烈な、ヘッドロック、頂戴いたしました。
そこへ。
こんこん、と、部屋の扉がノックされ。
「入るわよー」
返事を待たずに。
エリ先生が、お盆を手に、ご登場。
「何やってるんです? 大丈夫?」
「痛い痛い、母さん、痛い」
やっと気が付いた母さんが。
「あ、ごめんなさい、真綾」
ほっ。