第269話:永依夢(えいむ)さんの素朴な疑問
河崎永依夢さんに、彼女が撮ったと言う野鳥の写真を、見せてもらっていたらば。
先輩たちや、エリ先生もやってきて。
おさげ子先輩が、どんなカメラで撮ったのか、と、質問。
河崎さんは、嬉々として、バイクのところからカメラを持って来られるんだけど。
カメラだけではなく。
ホンダさんと鈴木の方菜さん、それにユイナおねえちゃんも、持って来られた。
いや、連れて来られました、よ。
ホンダさんも、方菜さんも、カメラを持って。
いやはや。
一度、夏に見たことあったけど。
「でかっ」
「すごく大きいですね」
口々に。
「これはまだ小さいほうだよ、もっと大きなの使ってる人もいるしねー」
河崎さんの代わりに、ホンダさん。
バイクの話は、終わったようで。
河崎さんから、こちらの話を聞きつけて、って感じかな。
そんな風に、集まっていたらば、雪人さんファミリーや、男子の皆も、何事か、と、やって来て。
それに、ホンダさんや、方菜さんのフォトアルバムも投入されて。
何故か、野鳥写真の、鑑賞会?
そんな、中。
雪人さんが。
「中央公園でこういうカメラで鳥の写真撮ってる人、いますね」
との、証言に。
ホンダさんが。
「そうそう、そこで撮ってるんですよ、いつもは」
へぇ。
あたしも知ってる、あの公園って、大きいけど、街のど真ん中にあるよね。
小学生の頃には友達とよく遊びに行ったっけな。
でも、あんなところに?
「え、あの公園に、オオタカとか、居るんですか?」
「居るよ、冬はだいたい、来くるね。夏場はなかなか見れないけど」
へぇ。
もう。
へぇ、の、連発。
あちこち。
いろんな人が、いろんな、会話。
漏れ聞いていると。
「このカメラって、おいくらぐらい、なんです?」
「あぁ、これはそんなに高くないですよ。百万もしないですし」
百万しない……。
百万には近い、って、事ですよね。
すごぉ。
「そう言えば、昔……」
何やら。
雪人さんが、語り出す。
「家族であの公園に立ち寄った時、オオタカの写真撮ってる女の子を見かけたことがありましたね」
「あぁ、それ、この子たちかもしれないね。あの公園で鳥撮りしてる女の子って、この子たちくらいだから」
あら。
なんだかんだ、皆さん、ご近所さんだったのね。
雪人さんも、近隣だとは思ったけど。
そっか、母さんと同じ会社のホンダさんも、わりと近くに住んでるのかな。
ヒトが増えて。
わちゃわちゃ、がやがや。
している中。
「みなさん、楽しそうでなにより、ですね」
「ですね」
少し離れて、河崎さんと、ふたり。
河崎さん。
社会人だし、あたしよりずっと年上のはずなのに。
年下の、アタシに対してもものすごく丁寧な言葉使いで。
小柄で、少し幼い感じがして、つい、同級生のような雰囲気も感じてしまう。
丁寧ってことだと、あたしもだけど、雪人さんと、同じ雰囲気、なのかな。
女性、と言う部分よりも。
人柄の良さが、出てるのかな?
って、こう言っちゃうと、自画自賛、かもしれないけど、ね。
やわらかくて、すごくとっつきやすいお姉さん。
ユイナおねえちゃんやエリ先生とも、また、違う雰囲気は。
なんか、癒される。
なんて、河崎さんと、ふたり、少し離れて、みんなを見てたりしたらば。
「園田さん、って、えと、その、男の子、なんだよね?」
河崎さんの、素朴な、疑問。
「あ、はい、一応……」
微妙に、答えにくいところではありますが。