第268話:永依夢(えいむ)さんの写真
河崎永依夢さんに、どんな鳥の写真を、と、訊ねてみたらば。
ささっとバイクのバックから、アルバムを取り出して、見せてくれる。
その、一枚目。
「ふわぁ、これって」
「オオタカさん、ですよ」
カッコいい。
森の前、タカが、翼を広げて、今にも何かに飛びかかろうとしているような。
なんとも、迫力のある、写真。
ページをめくってみると。
「それもオオタカさん、の、幼鳥……っと、子供ですね」
ふむふむ。
タカはタカなんだけど、ちょっと茶色っぽくて、縦縞の模様。
そのタカが、樹の枝にちょこん、と、立ってる。
「かっこいいと言うより、かわいいですね」
「でしょ、でしょ」
うれしそうな、河崎さん。
後、数枚も、タカが樹から飛び立つ瞬間とか、青空を背景に悠々と飛ぶ姿とかの写真の、あと。
「これは、すごく可愛いですね……こういうのが撮れるんですね」
全体的に、淡い緑色の背景。
多分、樹の中、かな。
あたしの好きな、緑色の中に。
小鳥。
形は、スズメっぽいけど、色が、全然違う。
淡い、茶色っぽい、緑色。
「これは、何て言う鳥なんですか?」
「へっへー、何だと思います?」
「うーん」
鳥さんの種類なんて。
スズメ? ハト? カラス?
「これはですねー、ウグイスさん、ですよ」
あ、名前と、鳴き声は知ってる。
実際に見たり聴いたりしたことはないけど。
知らず知らずに、知ってる、ウグイス。
ホーホケキョ、って、鳴くんだよね。
あと、梅にうぐいす、とか、うぐいす色とかも聞くかな。
「へぇ、これがウグイス、ですか」
なんとなく、目の周りに白い輪があって。
「もっと綺麗な緑色だと思ってました」
「あぁ、メジロと勘違いされる方は多いですね」
あ。
メジロ。
目の周りに白い輪って、メジロ、か。それも聞き覚えは、あるかな。
「これがウグイスさん、うぐいす色、なんですよ」
へぇえ。
と、しか。
その後の写真も。
どれも、見たことの無い、鳥の写真ばかり。
でも。
「あ、これがメジロですね?」
少し後、梅の花の中に、鮮やかな緑色の小鳥。
「そうですそうです。梅にメジロで、梅次郎」
何、それ。
きっと、そういった方面での、言葉なんだろうなぁ。
河崎さん、楽しそうで、何より。
とか、写真を見せてもらってたらば。
「なになに? 何見てるん?」
と。
先輩方が、寄って来られる。
「河崎さんに、鳥の写真、見せてもらってるんですよ、ほら」
手にしたアルバムを、先輩たちにも。
取られた……。
「おぉ、これはー」
「かっこいー」
「プロですか?」
「いえいえ、プロではないですよ。あくまで趣味、アマチュアですから」
少し照れつつも、さっと答える、河崎さん。
多分、こういうやりとりには慣れてらっしゃる、のかな。
「でも、こんなの撮れるなんて、すごいなぁ」
「ここまで撮ろうと思うとカメラも良いものが必要そうですね」
おさげ子先輩、何やら撮られた写真よりも、撮ったカメラに興味のありそうな。
「あぁ、まぁ、それなりには……持って来てるんで、ちょこっとお見せしますね」
てととと、と、また、バイクの方へ、小走り。
バイクの置いてある方を見ると。
ユイナおねえちゃん、ホンダさん、方菜さん。
まだ、ずいぶんと、盛り上がってらっしゃいますね。
お肉、無くなっちゃいます、よ?