第267話:永依夢(えいむ)さん
普段、あまり関わりの無い人も居て。
どうしても、普段から一緒に居る人たちが集まってしまいがち。
あたしたち、しの女の面々、男子たちに、雪人さんファミリー、それと、ホンダさんたちが、それぞれ固まってる感じ。
そんな中。
我が、叔母。
ユイナおねえちゃんは単独でホンダさんたちと、バイク談義?
ホンダさんと鈴木の方菜さんとなんだかバイクの前でわちゃわちゃしてらっしゃる。
レイちゃんと川村ちゃんが、雪人さんたちとお話してる。
男子たちは……ミツキさんも含めて、ひたすらお肉を食べてますね。さすが。
先輩たちと先生も、のんびりと、お食事。
そして、何故か、母さんと、鈴木の蘭さんが。
少し離れた場所で、何やら、真剣な表情で、お話中?
妙な、取り合わせとも、言えなくはないけど。
母さんがホンダさんと結婚とかって事になったら、蘭さんも親戚、って事になる?
それもあって、蘭さんが母さんの話を、って感じかな?
あたしは。
そんな皆を、その後ろの桜を眺めつつ。
さらに、桜の後ろ、広がる青空を、眺めつつ。
ぼんやり。
していたら。
あたしと同じように、ひとり、ぽつん、と。
上空を見上げる、女性が目にとまる。
河崎永依夢さん。
身長もあたしと同じくらいで、わりと小さめ。
お団子頭に、少し親近感。
あたしも、暑い時とか、髪が邪魔になるときは、後ろでくるっと巻いて、お団子にしたりしてるし、ね。
野鳥の写真を撮ってるって、言われてたけど。
どんな写真なのか。
ちょっとだけ、興味が、ある。
あんなに大きくて高そうなカメラだもん、すごく良く撮れそう。
そっと近寄って。
「河崎さん、ちょっといいですか?」
声をかけて、みる。
しかし、反応が、無い。
「河崎さん?」
少し声を大きくしてみると。
河崎さんが、一瞬、びくっとして。
あたしとは、逆の方……左の方を向いて、きょろきょろ。
?
「河崎さん、こっちです」
そう言うと、やっと。
こっちを向いて。
「あ、はい、何でしょうか……ごめんなさいね、右の耳が聴こえにくくって」
あ。
だから、左側から聞こえたようになっちゃったのか。
「ちょっと待ってね、念のため補聴器着けるわ」
そう言って、ポケットから小箱を取り出して。
その小箱から、イヤフォンみたいなのを取り出して、右の耳に。
「電池が結構高いから、必要な時しか着けないのよね」
と、訊いても居ない事だけど。
なるほど、と。
それにしても、若いのに補聴器って、何かの、障害、なのかな?
「はい、それで何かしら、えっと、園田さん?」
うん。そこは、さらっと、金髪子先輩じゃないけど、空気を、読んで、スルーで。
「あ、えっと、鳥の写真撮られてるって、どんな写真なのかな、って思って」
そう、告げると。
河崎さんは、ぱぁっと、表情を明るくさせて。
「あ、興味あります? いくつか写真あるので、お見せしますね。ちょっと待ってて下さい」
そう言って、バイクの置いてある場所へ。
ユイナおねえちゃん、ホンダさん、方菜さんの居る方へ行かれる。
バイクに積んであるのね、写真。
バイクの後部座席に取り付けたバックから、何やら、と、言うか、多分写真の入ったアルバム? みたないものを、取り出して。
小走りに、こちらに戻って来られる。
「はい、お待たせ、こういう写真撮ってるんですよ」
手渡される、A四サイズの、クリアファイル。
そこそこ、分厚い。
表紙には、何も書かれていない、緑色の、ファイル。
その表紙をめくってみると……。