第264話:自己紹介大会③金ぱっつんお姉さんのお名前は
満開の桜の下、開催中のお花見バーベキュー大会。
八時間目のメンバーを中心に。
あたしの友達、関係者が、勢ぞろい。
おねえちゃんや、母さんの会社の人まで加わって。
総勢、二十四名。
うひょぉ。
だね。
その中の、おひと方、母さんの会社の、ホンダさん。
それに、そのホンダさんのお連れの、女性三名。
ホンダさんもだけど、女性陣は、初対面。
あ、夏の合宿の時に、ちらっとだけ。
あたしと母さん、それにシズさんはニアミスしてるけどね。
話してたのは、母さんとホンダさんだけだったし。
そういう意味では、この間の、ユイナおねえちゃんとホンダさんもニアミスと言えるよね。
そんな、ホンダさんたちの、自己紹介の前に、ひと区切り。
いったん、皆で、バーベキューのお肉お野菜、それに海鮮な食材も混ぜて、ぱくぱく。
「それじゃあそろそろ自己紹介の続き、いきましょー」
空気を読むスキルが、何気に高い、金髪子先輩。
もしかしたら、シズさんが、こっそり後ろで指揮してるのかも、しれない?
「あ、はい、ウチですね」
ホンダさん、一人称が、ウチなのね。
「ホンダと言います。今日は勤め先で一緒の園田さん、えっと、沙綾さんにお呼ばれして、お邪魔させてもらってます」
うん。
そこは、さすがに、知ってる。
他のメンバーにも、ざっとそんな紹介は、してるから。
聞きたいのは、そこから、先。
「えーっと、それで、ですね、趣味で写真、野鳥の写真を撮ってたりするんですよ」
あぁ。
それも、知ってる。
「こっちの三人の娘は、そのあちこち一緒に野鳥写真を撮りに行ってる仲間なんです。今日もこの後、一泊してこの辺りで鳥の写真、取ろうかなって計画してるんです」
夏の合宿で会った時も。
大きなカメラを抱えて、このメンバー、でしたよね。
「ちなみに、こっちの金髪の娘は、ウチの妹の孫で、『蘭』って言います」
「孫!?」
「まごっ!」
「まご……」
さすがに。
驚きの、面々。
ホンダさんが、そんなに高齢には見えないところもあって。
父親ならまだわかるけど。
おじいさん。
あぁ、妹さんの孫なら、なんて言うんだろう。
姪、とは違うのかな。
「はじめまして。鈴木家の長女、蘭と申します。よろしくお願い致します。こんな見かけですが、そちらの金髪のお嬢さん……ミリィさんと同じ、日本人ですわ、ね、ミリィさん?」
「はいはーい、そうですよ、ウチも日本人ですーよろしく、蘭姉さん!」
金髪子先輩にしてみれば、色々と親近感、沸きまくりだろうね。
「え、ちょっと待って」
そこに、割り込む、ユイナお姉ちゃん。
「スズキ・蘭?」
お姉ちゃんの問いに、少しムっとした表情の、鈴木さん。
「蘭、と、名前で呼んでいただければ有難いですわ。こっちにももう一人、スズキが居やがりますので」
さらっとユイナおねえちゃんをかわそうと、するけど。
そして、なんか、さらっと妙な日本語を聞いた気も、する。
「いや、スズキの蘭ってスクーターあったよね」
「……ええ、大昔にあったそう、です、わね」
あぁ。
「ホンダ・タクトさんの大姪がスズキ・蘭って」
あぁああ。
爆笑、おねえちゃん。
これは、さすがに、マズい。
ホンダさんにもだけど、ヒトの名前を笑っちゃいかーん。
あせって、おねえちゃんのクチを塞ごう、と、思ったら。
「いてっ!」
ごつん。
母さんの、縦チョップが、ユイナおねえちゃんの、脳天を。
直撃。
「すみませんごめんなさいウチの者が大変失礼を」
焦ってるのは、母さんも、同じ。
あたしも、一応、ユイナおねえちゃんのクチを掌で覆って。
「これ、ウチもめっちゃ笑われる流れやン」
関西弁の女性が。
「まぁ、もう、慣れとーからえぇけどな。ウチは……」
ショートカットの方の、女性が。
「鈴木『方菜』言います、よろしゅう頼んます」
「ぶっ!」
ぐあぁ。
おねえちゃん。
あたしの手の中で噴き出してるし。
『かなた』なら、よくある名前かもだけど。
『かたな』って、ちょっと変わった、珍しい名前?
かたな……刀、かな?
かっこいい名前?
でも。
また。
おねえちゃんが、噴き出すほどのお名前?