第261話:ピーマン(パプリカ)も食べましょう
困った。
いきなり、金髪子先輩から。
乾杯の音頭を、と。
踊ればいいの、かな?
『乾杯音頭』
何、ソレ。
そんな、わけ、無い、ない。
なんか言わねば。
「えぇっとぉ、本日は、お日柄もよく……」
と。
「かたいかたい、もっとほら、可愛く、ほら」
即座に、横に居るユイナおねえちゃんから、背中パンと、お小言。
んもー、ならおねえちゃんがやってよー、と。
言いたいところでは、あるも。
おねえちゃんは、このメンバーとは初対面。
うにゅぅ。
注目されるのは、それなりに慣れている、とは、いえ。
恥ずかしいのが、無くなることは、ない。
でも。
気を取り直して。
「今日は天気も良くって、お花もキレイに満開で」
下を向いて、では、なく。
庭に植えられた、咲き誇る、桜の花を、見渡して。
それから。
コンロの上の、食材たちの、焼け具合。
こちらも、少し気にしつつ。
うん、そろそろ、イイ感じに焼けてる、かな。
さらに。
みんなの目線。
みんなの顔を、表情を、見渡しながら、みんなに。
「四月になって、新しい学年、新しい年度が始まる前に、今日は」
ある意味、ちょうど、節目?
みんな。
皆さん。
うんうん、と、頷いてくれて。
「めいいっぱい、美味しい食事と、キレイなお花を楽しみましょう」
コップを持った手を、前に伸ばして。
「それでは」
高々と、上へ。
「かんぱーい!」
あたしの声に、あわせて。
皆が。
乾杯の、合唱。
からの。
「さぁ、どんどん食べてねー」
金髪子先輩が、繋げてくれて。
先ずは、舌鼓。
コンロの上から、串を取って。
串からお肉、お野菜を、お皿へ。
男子の中には、串にそのままかぶりついてる子も居る。
意外と。
アカネさんも、そのまま串から食べてらっしゃいますね。
豪快だぁ。
って、おねえちゃんもかっ。
コンロ上から、消えた食材を。
シズさんが、ささっと補充して、次のを焼きはじめてくれて。
山田くんのお兄さんは、火加減を確認しつつ、炭を補充してくれたりしてる。
アキラくんを抱きかかえた雪人さんには。
雪枝さんと美里さんが、給仕して、食べさせてあげてる、けど。
「ピーマン、いやぁああ」
「だめよアキラ、これも食べないとパパにポイされちゃうわよ」
ゆーらゆら、雪人さんに揺らされて、ポイされそうな、アキラくん。
「あうぅ、ポイだめー、たべゆー」
あはは。
無理やり感も強いけど。
アキラくん、文字通り、苦虫をかみつぶしたような表情で、もぎゅもぎゅ、ごっくん、そして。
渋い笑顔で。
「ジュースちょーだーい」
「はいはい」
パパからジュースをもらって、ごくごく。
「アキラくん、ちゃんと、食べてえらい、えらい」
アキラくんたちの近くに居たので。
頭、なでなで。
あはぁ、可愛いなぁ、ほんと。
子供、かぁ。
あたしにも、こんな時代が、あったんだよねぇ。
それに。
あたしも、大人になったら、いつか。
結婚、して。
子供、かぁ……。
なんて。
アキラくんを見ながら、思っていたらば。
「さって、じゃあ、次のが焼けるまで、自己紹介でもしましょうかー」
おっと。
主催? の、金髪子先輩の、音頭で。
何やら、自己紹介大会が、始まる、模様。
「もちろん、真綾から、はい、どーぞー」
しかも、当然のごとく、あたしから、かいー。