第260話:お花見ばべきゅー、はっじまるよー
バイク用の革ツナギから、普通の洋服へと着替えを終えた、ホンダさん御一行。
おじいちゃんと同じ歳ほどの、ホンダさんに。
何故か、うら若き乙女が、三名。
一番背の高い『金ぱっつんおさげ』さんは。
おさげを解いて『金ぱっつん』さんになっているけど。
小柄な二人の方は。
ひとりは、ショートカットのままだけど、もうひとりは、お団子頭に変化してるね。後ろに一個、大きなお団子。
バイク用のヘルメットって、女性の長い髪には大敵、かも?
長いと中に収めるの大変そうだし。
外に出していると、髪が傷んじゃいそうだし。
そして、何故か。
ショートカットの小柄な女性は、首から、あれは、双眼鏡? かな。
ぶら下げてらっしゃいます。
はて。
そんな御一行、を、金髪子先輩がお出迎え。
「おかえりー。もう少しで準備できるし、ゆっくりしててー」
「え、準備、手伝いますよ」
「もうほとんど終わってるから、大丈夫ー」
「そんな、悪いです」
「じゃあ、後片付け、がっつり手伝ってもらっちゃおうかなー」
「ああ、はい、それなら」
うんうん、と、ホンダさんの後ろ、女性陣三名も頷いて。
実際。
男子チームの機材準備の方も、ほぼ終わってるっぽい。
食器と飲み物の準備も整って、女性チームも女装チームに合流して、食材の準備中。
これが一番手間かかるけど、人海戦術で、もう終わりそう。
最初の準備としては、このくらいで大丈夫、かな。
後は、食材が減ったら追加する感じで。
「じゃあ、準備はこれくらいで。そろそろ、始めようかー」
主の号令で。
「各自お皿とお箸、それにコップ貰ってねー」
テーブルに置かれた紙製の食器から、自分の分を取って。
「あと、紙コップに自分の名前、書いておいてねー」
あー。
飲みかけのを、適当にその辺に置いておくと。
誰のかわからなくなるから、ね。
サインペンも何本かテーブルに。
それを使って、きゅきゅっと『まーや』って。
紙コップ、とは、言っても。
結構、厚くてしっかりとしたもので、色も真っ白ではなく。
お皿の方も、同じデザインで、高級感が漂う。
さすがと言いますか。
「飲み物は適当に、お好きなものをどうぞー」
氷の入った箱に無造作に入れられた、ペットボトルの数々。
お茶やらジュース、炭酸飲料も。
「おっ酒~おっ酒~ビール~ビール~」
ユイナおねえちゃん……。
「あー、今日はアルコールは無しですよー未成年多いし、車の人も居るからねー」
「えぇ、そんなぁああ!? お花見って言ったらお酒でしょー」
ユイナおねえちゃん……。
貴女も、この後、バイクで実家に帰るんでしょうに。
「うぅ、しょうがないかー。ショウガないけど、ジンジャエールにしよ」
人数多いから、順番待ちの渋滞も。
ひと通り、皆が飲み物を注いでいる間。
八時間目のメンバーで、最初の食材をコンロに並べて。
会場の主であるところの、金髪子先輩が。
「さぁてと、じゃあ、真綾ちゃん乾杯の音頭を」
「ふぇ!?」
って。
変な声が、出ちゃったじゃない。
「と、突然ですね」
「いや、だって、今回のメンバーって、元はと言えば、真綾の知り合いばっかりだし」
そう言われてみれば。
あ、でも。
「ホンダさんは……」
「そっちも真綾のお母さんの知り合いでしょ? 園田家代表で、真綾よろしくー」
おぅふ。
金髪子先輩の声に。
あたしに、注目が、集まってしまう。
ど、ど、ど、どうしよう。
焦りながら、周りを見渡すと。
みっつのバーベキューコンロ。
そのまわりに、テーブル、その向こうには、椅子も用意されてて。
大きなパラソルも、立ててあったり。
そして。
お花見よろしく。
庭の周囲には、満開に近い、桜の樹が並び。
すでに炭火で焼かれつつある、お肉や野菜の香と、煙。
あぁ。
やー。
これ、どうしよぅ。