第259話:金ぱっつんおさげさんとバーベキューの準備
バイク四台で連なって。
ご到着の、ホンダさん御一行。
母さんの、想い人で、母さんが求婚までした、おじいさん。
でも、なんで。
そんな人が、若い女性を、三人も?
ヘルメットを取って、ジャケットの前を開けると。
中は身体にぴっちりの、ライダースーツ……革ツナギ。
かっこいいんだけど、ちょっと、アレな感じも、しなくは、ない。
そんな珍しい恰好も、然り。
ほぼ初対面で、物珍しさもあって。
さらに。
ホンダさんのすぐ後ろ。
一番、背の高い女性の姿が、あまりにも特徴的で。
あたしも含めて、作業中の面々が、手を止めて、注目に、至る。
ひと言で、言うと。
『金ぱっつんおさげ娘』
うん。この表現が、ぴったり。
少し高い背丈も、しかり、ぱっつんの前髪も、しかり。
髪の色が、金で、おさげにしてるのだから。
もちろん、顔立ちは似ても似つかないけど。
風合い? は、『金ぱっつんおさげ娘』
眼鏡も掛けていれば、パーフェクトだったけど。
眼鏡は、無し。
その後ろに、隠れるように、もう二人の女性。
こちらは二人とも、金ぱっつんおさげ娘さんよりも背が低く。
ホンダさんと同じ……すなわち、あたしと同じくらいの身長で。
ひとりはショートカット、もうひとりは、セミロングを後ろで束ねてる。
体形も、あたし……と言うか、おさげ子先輩風で、ふくよかすぎもせず、細すぎもせず、って感じかしら?
そんな、お三方、それとホンダさんに。
母さんが。
「ミリィちゃん、わたしが案内してきてよいかしら?」
金髪子先輩に、ご確認。
「はいはい、沙綾さんのゲストだし、お願いしますねー」
「ありがとう、ミリィちゃん」
母さんは、ホンダさんの方へと向き直って。
「では、案内しますね、こちらへどうぞ」
「すまんねぇ、よろしく」
母さんに着いて、別荘の玄関から、中へと。
移動中に聞こえて来た、ちょっとした、会話。
「めちゃくちゃでっかい別荘やン」
「せやねー、リョウコさんとこもたいがいだったけど」
「世間は狭いンか、広いンか……ウチらからしたら別世界やなぁ」
関西人さん、かな?
なにやら、関西弁が、漏れ聞こえて来たような。
でもまあ。
この別荘の大きさには、普通なら、誰でも驚きますよねぇ。
最後のゲストが、お着換えの為に別荘の中へと案内された、後。
気を取り直して?
作業、再開。
あたしは、レイちゃん、川村ちゃんと、雪人さん、それに……。
「アキラはこのお水でお野菜を洗ってね」
「あい、アキラくん、おやさいあらいまーす」
びしっと右手をあげて。
パパからの指令を、実直に受領する、アキラくん。
ドレスのような、ピンクのワンピースに、濃紺のデニムのエプロン。
エプロンと、言えば。
女性、女装のメンバーは、皆、エプロン装着。
あたしと、先輩たち、それにエリ先生も。
八時間目の特別カリキュラムの中で作った、色違いでお揃いのデザイン。
これだけの人数の中に、居て。
この五人が、少し特別なんだって。
思える。
さて。
あたしたち、女装チーム(?)は。
食材を、洗ったり、剥いたり、切ったり、串に通したりして。
女性チームが用意してくれた、お皿に、並べて。
男子チームは、倉庫から運んできた、椅子やらテーブルやらを、並べて、バーベキュー道具を設置して、火起こしとか。
慣れない部分もあったりはするんだろうけど。
どうやら、山田くんのお兄さんが、アウトドア派のようで。
結構、慣れてるみたいで、山田くんともども、他の面々に指示しつつ。
そんな男子に混ざってる、おさげ子先輩は。
知り合いのメンツだから、って言うのもあるかもしれないけど。
もう、男子に慣れない、と言った雰囲気は、無くなって。
笑顔で。
「ほら、そこ、さぼってないで手動かす」
ちょっと動きを止めていた森本くんに、叱責を飛ばしたりして。
「うへぇ、何やりましょうかね?」
「まだパラソル出してないから、こっち来て」
「はいはーい」
まだ、何度か。
倉庫を行き来して。
春休み・お花見バーベキュー大会の。
準備が、続く、中。
女性チームのはずの、ユイナおねえちゃんは。
ホンダさんたちの乗って来たバイクに、興味津々。
バイクのそばまで行って、じろじろ、と、眺めてらっしゃいます、ね。
誰か、仕事しろって、突っ込んであげて欲しいところ。
と、言うか、身内、家族である、あたしが言うしかない、かなぁ。
とか、とか、やっていると。
「皆さん、すみません、戻りました」
お着換えを終えたのか。
母さんと、ホンダさん御一行が。
お戻りに。