第258話:ホンダさん御一行、ご到着
「さーて、じゃあ、そろそろ、準備、始めよっかー」
家主の、合図で。
おーっ!
って。
「男子チームはツグミんと機材の用意おねがい。女子チームはウチと食器と飲み物の準備ね。それから女装チームはサクラと食材のカットとかよろしく」
「おー」
「やるかー」
「はぁい」
「了解~」
女装チームって……アタシとレイちゃんと、川村ちゃん、それに雪人さん?
「あ、身重のアカネさんは、ゆっくりしててねー」
そう。
わちゃわちゃとみんなが話している中で、知られる事になった、アカネさんの、ご懐妊の、情報。
アキラくんの、きょうだいが、って、お話。
妊娠三か月、だって。
「えへへ、ごめんねー」
そうは、見えない、アカネさん。
着ている服がだぼっとした感じのワンピースのせいか、お腹の様子もほとんどわからない。
それに、これだけ人数が、居れば。
ひとりくらい、ね。
おさげ子先輩が、男子を率いて、別荘の倉庫に。
別荘に、倉庫。
もう、驚きません、けど。
金髪子先輩は、女子と言うか、女性たちを率いて、別荘の、中へ。
紙皿、紙コップとか、飲み物は、別荘の中に運び込んであるみたい。
ぱっつん子先輩に連れられて、あたし達女装男子は、別荘のバルコニーへ。
「バルコニーに冷蔵庫……」
バルコニーに、でんっ、と、置かれた、冷蔵庫。
しかも、わりとでっかい。
「いちいち部屋の中まで食材を取りに行くのは面倒ですし」
な、なるほど。
男子チームが運んでくれたテーブルに、まな板やら包丁やらの、調理器具。
女子チームはそこに食器や飲み物を。
男子チームは、引き続き、バーベキューセットを組み立てて。
とか、準備を始めていたらば。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ。
別荘の門の前。
バイクが、いち、にぃ、さん、四台。
その先頭のバイクのライダーさんが。
ヘルメットのアゴの部分を、かぱっ、と、開けて。
「おはようございます、遅れてすみませんっ」
ホンダさん。
時刻は、ちょうど集合予定時刻、くらい。
だから、遅れた、と、言う訳ではない、けれど。
後ろの三台のバイクのライダーは。
ぱっと見、三人とも、女性?
ひとり、大柄の人は、ヘルメットから長い金髪がはみ出してるから、間違いなさそう。
あとの二人は、小柄で、髪も見えないけど。
体形、体格からして、女性っぽい。
そんなバイク集団に、あたしより早く気付いた母さんが、ホンダさんに駆け寄って。
「おはようございます。お疲れ様です」
「ああ、園ちゃん、おはよう。バイク、あっちに停めればいいかな?」
一応、念のため。
「えっと、ミリィちゃん、あっちでいいかな?」
家主に、ご確認。
「はいはーい、邪魔にならないとこならどこでもダイジョブですよー」
「じゃあ、あのバイクの近くに停めてもらえますか」
「了解、ありがと」
ホンダさんがバイクを移動させると、後ろの三台も、ホンダさんに、続く。
ユイナおねえちゃんのバイクに並べる形で、停車。
バイクから降りて、こちらへやって来られる。
「すみませんね、道、間違えちゃってちょっと迷っちゃった」
「いえいえ、大丈夫ですよ。準備始めたばかりですし」
ホンダさんたちは、今日は、スペシャルゲスト。
母さんの……、って。
先輩たちにも、ある程度の事情は、説明済みで。
と、いうか、その説明抜きでは、参加の意味が、不明だもんね。
「あと、ごめん……着替えさせてもらっていいかな?」
あー。
ユイナおねえちゃん同様、皆さん、バイクスーツ、革のツナギ。
そのままだと、ね。
ホンダさんは、顔見知り、だけど。
うしろの、三名は。
ヘルメットを外したその素顔を見ると。
やっぱり、皆、女性で。
はっきりとは、覚えていないけど。
そういえば、夏休みの合宿の時に、ちらっと見た人たち、だよね。
多分……。