第253話:おねえちゃんとのチューショットを先生に見られた
ユイナおねえちゃんの、ご希望に、より。
「はい、じゃあ、撮るよー」
春休みだって言うのに、制服を着て、学校の正門の前で。
「姉さん、ちゃんと学校名も入ってる?」
「うんうん、入ってるよー、はい、ポーズ」
正門わきの、壁。
そこに、横書きで『東雲女子高等学校』の、看板。
ちょうど、『等学校』の前あたりに、あたしと、ユイナおねえちゃんが並んで立って。
かしゃ、っと。
母さんが操作する、携帯端末のカメラ機能から、撮影音。
「もう何枚か、お願い姉さん」
「はいはい、じゃあ、もう一回、はい、ポーズ」
なんて、やっていると。
なんだこれ、って。
ちらり、ちらり、と、見られる。
春休みとは、言え。
部活とかで、学校に来る生徒も居るし。
そもそも、先生方は、勤務中。
ちょうどお昼時、ってこともあって。
正門を通るひとも、ちらり、ほらり。
あたしが有名人って事もあって、尚、更に。
見られまくってますけどぉ。
見慣れない、母さんやおねえちゃんが一緒に居るから。
声をかけられるまでは、無い。
と。
油断してたら。
「え?」
かしゃっ。
携帯端末を持つ母さんの方を見てたら。
ほっぺに、何か、柔らかいもの。
「さんきゅー、ねえさん、見せて見せてー」
おねえちゃんが、母さんから携帯端末を受け取って。
「おーっ、よく撮れてるー」
イヤな、予感。
「ほれ、どうよ」
おねえちゃんが携帯端末の画面に表示された写真を見せてくれるんだけど。
イヤな予感、的中、と、言うか、的チュー……。
「ね、ちゃんとチューショットでしょ」
でしょ、じゃ、無いです、お姉様……。
うぅ。
まぁ、あたしの知り合いに出回らなければ、大丈夫だとは思うけど。
災いは。
災難は。
巡って来る。
ふと思ったけど。
災いの字と、巡るの字って、似てる、よね。
「園田さん、何やってるの?」
あちゃぁ、わぁー。
まさかの、エリ先生が、通りがかり。
ユイナおねえちゃんが、即座に。
「あら、えっと、もしかして、エリ先生?」
「あ、はい、沢田ですけど、失礼ですが」
「真綾の姉ですー、よろしく先生」
いやいや。
「お姉さん!?」
「あはは、わたしの妹ですよ。真綾の叔母にあたります」
さすがに、母さんがフォローしてくれて。
「なんだ、びっくりした……沙綾さんのお子さんにしては大きすぎですよね」
「はい、すみません、お邪魔しました。わたしは仕事があるので、これにて」
母さんは、さすがに。
二日酔いで、午前半休して、午後から出社。
「あ、はい、お疲れ様です、行ってらしゃいませ」
「母さん、気を付けて、行ってらっしゃい」
「姉さん、がんばー」
飛び入り? の、エリ先生も含め、三人に見送られ。
母さん、退場。
と、言うか、ご出勤、の、後。
「なんか、ちゅーしてたように見えたけど」
「そうそう、チューショットですよ、チューショットほら」
って、おねえちゃん!?
先生になんてもの、見せやがりますかねっ!
「おぉ、ほんとだ、チューしてるっ」
あたしのほっぺに、軽く、ねえさんが。
「家族なんだから、別に問題無いし、いいでしょ?」
「まあ、そうね」
「それより、先生どうしてここに?」
「お昼ご飯、買い出しに行こうかと思って。春休みだから学食閉まってるのよね」
あぁ、なる、ほど。




