第246話:ふたりでお風呂でゆっくりと
結婚。
付き物と言えば、付き物なお話。
なんだろうけど。
ねぇ。
「子供作るにしても、楽しまないと、ねぇ」
ねぇ、じゃ、ねぇ、って、おねえさまや。
「だーかーらー、もぉ、そういうの、勘弁してよ」
ほら、母さんも、真っ赤っか。
「んー、わたしの事はいいとして、沙綾ねえさんはどうなのよ、結婚とかしないの?」
「う」
矛先。
「まだしばらく先かもだけど、真綾が嫁に行ったら老後はひとりきりよ?」
「真綾は嫁にはやりません。それにまだ老後なんて歳じゃないモン!」
母さまや。
何気に、可愛らしい……のは、いいとして。
嫁じゃない、と、何度申しますれば?
「それにしても、子供とふたりきりとか、寂しいじゃない。まぁ、実家に戻って、わたしの手伝いしてくれるとかもいいかもだけど」
あぁ。
その手も、あるのか。
就職先。
困ったら、ねえさんのところ、と言うか、母さんの実家で。
お手伝い、かぁ。
農家のお手伝い、とか、大変そうだな。
「わたしは……」
あたしの事よりも。
母さん。
結婚、と、言えば。
「お? なんか、そういう話、あるわけ?」
おねえちゃん、食いつき。
「あいやぁ、まぁ、あると言うか無いと言うか」
母さん、しどろん、もどろん。
仕方ない、か。
告白はして、その意志はあるものの。
相手のある話だし。
その相手の回答も、保留されちゃってるらしいし。
「なんだ、あるんじゃない。聞かせてよ、ほら、吐け吐けぇ」
ねえさまや。
まだ食事中です、よ?
回鍋肉、辛うま、辛うま。
もぎゅもぎゅ。
下手にクチも挟めず。
「実は、勤めてる会社のひとで……」
母さんも、あたしに話した時みたく。
誰かに聞いてもらいたい面も、あったの、かも。
「ふむふむ、そのひとが?」
おねえちゃんも、興味しんしん。
前のめりん。
でも。
お箸が、止まってる。
せっかく、美味しく作れた回鍋肉。
「ふたりとも、ごはん、冷めちゃうから、後でゆっくり、お風呂にでも入りながらおしゃべりしたら?」
と。
「あはは、こりゃ一本。ホント、真綾はいいお母さんになりそうだ!」
んもー。
でも、まあ。
ご飯は美味しく楽しく。
他愛もない話題に、戻して。
箸も、進めば。
「ふぃい、ご馳走さまー。おいしかったよー、真綾!」
「はい、お粗末様、でした」
お世辞でも、嬉しいけど。
おねえちゃんの、この、満面の、笑み。
本当に、そう思って言ってくれてるんだって、わかると。
なお、嬉しい。
むふー。
そして、食後のお茶とデザートも、堪能したら。
ぴろりろりーん。
『お風呂の準備ができました』
「っと、じゃあ姉さん、一緒にお風呂はいろうかー」
「えー……」
母さんは、少し引いてるけど。
「昔はよく一緒に入ったじゃない、それに真綾もさっきお風呂でゆっくりお喋りしろって言ってたしー」
まぁ、あたしに聞かれず、ゆっくりふたりきりで、と思った次第ですけど。
「真綾も一緒に、三人で、入る?」
「入りません。姉妹水入らずでどーぞ」
「お風呂で水入らずってのも変な話だね」
「水入らずでお湯に入るんだからいいじゃない」
母さん、ナイス。
ですが。
素直に入るの了承しちゃってますね。
はい、行ってらっしゃい。
入ってらっしゃい!