第243話:ユイナおねえちゃん襲来
ユイナおねえちゃん。
おねえちゃん、と、言いながらも、母さんの妹なので、本当は、叔母さん。
おばさんと呼ぶと叱られるので、おねえちゃん、と、呼ぶように言い聞かされて。
実際、歳もそんなに大きく離れているわけでもなく。
おねえちゃん、と、呼んでも、違和感は、無い。
そんな、ユイナおねえちゃんが。
春休みに、家にやって来た。
何年か、ぶり。
ずっと大学、それも大学院で、籠って研究してる、らしい。
お爺ちゃんの家、農家を継ぐために、農業系の大学で勉強してるんだって。
実家のお爺ちゃんのところにもほとんど帰ってないみたいだけど。
何故か、突然、うちへ。
ぴんぽーん。
「あ、来た」
あたしは春休みで、家に居るから。
母さんは、お仕事で、日中は、居ない。
なので、あたしが、応対。
玄関、開けたら。
荷物満載の大きなバイクの前。
ちっちゃなおねえちゃん。
ちっちゃな、と、言っても、あたしとほとんど変わらない身長。
バイクと対比すると、ちっちゃく見える。
と、言うか、バイクがおっきく見える?
バイク好きのおばあちゃんの影響なのか、ユイナおねえちゃんは、車じゃなくて、バイクが好きみたい。
ヘルメットを小脇に抱え。
革のツナギを、ぴっしりと着こなして。
かっこイイ上に、やたら、セクシー。
背丈はそんなにないし、髪の長さもあたしと同じくらい、だけど。
ツナギに浮かぶボディラインが。
うん。
女性らしさ満載、満開で、ちょっとえっちい、かも。
「おねえちゃん、お疲れ様」
「うぇい、バイク、中入れさせてー」
「はいはい。荷物も降ろさないとね」
「うんうん」
ガレージの門を開けて、自転車をちょっと移動して隙間を作って。
そこに、バイクを移動。
こんなに大きなバイクを、すいすい、と。
すごいなぁ。
おばあちゃんにも驚かされるけど。
やはり、血筋? なのかな。
ガレージの隅に移動させたバイクの後ろ、前に積まれた荷物を、降ろして。
重っ。
こんなに大量に……よくこれだけ積み上げて、コケないもんだなぁ。
とか、感心しつつ。
ようやっと、部屋へ。
入るや否や。
「うわ、おねえちゃん、何て恰好してんのよ」
革のツナギの、上をがばーっと開いて。
中に着ていたセーターを、脱いで。
短いキャミソール一枚になってる……。
ブラは着けてるみたいだけど。
むぅ。
「バイクスーツ蒸れるのよ、シャワー借りるわよ」
おねえちゃんの荷物を、リビングのソファに並べつつ。
「はいはい、どうぞー」
「真綾も一緒に入る?」
何を言い出す、やら。
「入りません」
「えー、昔は一緒によく入ったじゃなーい」
まぁ、確かに、おじいちゃんの家に居た頃は。
でも、ねぇ。
「昔は昔。はい、さっさと行ってらっしゃいな」
「うぇーい、けちー」
ぶつくさ。
言いながら、荷物の中からタオルを取り出して。
って。
タオルだけかーい。
って、突っ込む間も無く。
浴室方面へと消える、ユイナおねえちゃん。
さて。
お茶と、軽いおやつ、用意しておこう、かな。