第232話:東雲女子高校入学試験の準備
東雲女子高等学校、入学試験。
明後日に、この学校内で行われる、との、ことらしく。
八時間目で使っている空教室も、試験会場となるってことで。
「さて、片付けますか」
「えー」
「片付けると言っても、どこに移動するんです?」
「仕方ないから、先生の部屋に移動するわよ」
八時間目の、空き教室。
なんだかんだ、持ち込まれた『備品』が、ちら、ほら。
お茶用の電気ポットに、湯飲みとか、カップとかスプーンとか。
インスタントコーヒーとか、スティックシュガーやミルクとか、とか。
寄り合いの日は、そんなグッズでお茶しながらやってたので。
もちろん、備品は、みんなの持ち寄り。
あたしも一部、ご提供。
「ほら、ちゃきちゃき働く」
「うぇええ」
「隅っこに置いておけばよくないですかね?」
金髪子先輩と、おさげ子先輩が、微妙にダルそうに。
「あたしの分は、あたしが自宅に持ち帰りますね」
まぁ、近いし。
「あ、それなら、先生の部屋じゃなくて、全部真綾ん家でよくない?」
おぉっと。
「まぁ、別に、構いませんけど?」
「そうしてもらえると、助かるわ。わたしの部屋、そんなに広くないから」
暗に。
あたしん家は、広い、と?
それなり、だけど。
このくらいの荷物なら。
しかも、数日間、なら。
「それでは、手分けして運ぶと致しましょう」
ぱっつん子先輩が、率先して。
各自に荷物を配分して。
揃って、移動。
荷物の他に、カバンも。
「うよっし、今日はもう、このまま真綾ん家でお茶会だー」
「ちょっと、机の中も確認なさい。空っぽにしなくちゃダメですわよ」
「はーい」
ひと通り、机の中も、確認して。
「んじゃ、しゅっぱぁつ」
ぞろぞろ。
押しボタン式信号の、ボタンを押して。
右、左、右、と、確認して。
止まった車の、後ろからも車が来てないか?
注意しながら、小走りに。
「そういえば、つい先日、押しボタン式信号を渡っていた中学生が車に跳ねられたってニュースでやってたね」
「あぁ、見た見た。かわいそうに、ねぇ」
「ちゃんと青信号で渡ろうとしてたのに、赤信号で車が突っ込んできたんですってね」
「しかも、停止してる車を追い越して来たって、何考えてんだって感じよね」
「それはひどいわね……」
なんて。
会話。
その、押しボタン式信号を、渡りながら。
前ではなく、左右を確認しながら。
そういった、暴走車が、来ないか?
怖い、よねぇ……。
自分の身を守るためにも。
安全確認、大事!
移動した、八時間目の教室の荷物。
リビングの片隅に、置いて。
まったりと、お茶会。
「そういえば」
「なぁに? どした、ツグみん」
「真綾ちゃん、バレンタインにチョコって貰った?」
あー。
「唐突ですね……しかも、いつの話ですか」
もう、二週間近く前の、話。
バレンタイン。
実は、混乱とか、浮かれた状態を防止するために。
学校側から『バレンタインに食べ物持ち込み禁止』措置。
もちろん、生徒からはブーイングでは、あるけど。
学校側の、伝統だそうで。
昔、何か事件でもあったんだろうか? って、勘ぐっちゃう。
「母さんからは貰いましたよ。あたしもあげましたけど」
「おぉ、母娘でチョコ送り合い、いいね」
「ウチらはなーんも無かったなー」
「ふっ、バレンタインなんてチョコ会社の営業企画にすぎませんわ」
うん。あたしも、そう思う、けど。
ね。