第231話:一月は行き、二月は逃げ
お正月、新年が明けて、この時期。
一月は行き、二月は逃げ、三月は去る。
なんて言われる程に。
何故か、時間が早回しになったような錯覚を、覚える事も多い。
そんな、逃げ行く、二月に入り。
「母さん、こんな感じでどうかな?」
「んー、どれどれ……あ、良く出来てるじゃない。これって、かまぼこの板?」
「うん、そうだよ」
と。
玄関に取り付ける『園田の湯』の、看板。
あんまり大きくして目立つのもマズいので。
ちっちゃ可愛い感じで。
文字も、丸文字で、かわいらしく。
「じゃあ、玄関に付けてくるね」
「はーい、よろしくー」
なんて。
ちょっとした、お遊びも、してみたりして。
お風呂にやって来たエリ先生も。
「玄関のアレ、何なんです? ちょっと笑っちゃったじゃないですか」
よし、ウケたっ。
「あはは、ちょっとした冗談ですよ」
「わかる人にしかわからないジョークだね……」
それは仕方ない。
これは、ちょっとした息抜き?
何か、本当、いろんなことが、ありすぎて。
高校生活って、こんなに忙しいものなのか。
中学の時とは、全然違うなぁ。
と、改めて、思う。
アルバイトも始める事になったし、ね。
レイちゃんと。
あたしと違って、本物の、トランスジェンダー女子。
一月にも、女装男子大会で会ったから、そんなに久しぶりでもないけど。
普段は、会う事が無いから、ね。
「久しぶり、よろしくね」
「こちらこそー」
なんて、アルバイト先で。
さらに。
「雪人さん、お久しぶりです。今日もよろしくお願いします」
「あぁ、真綾ちゃん、レイちゃん、お久しぶり、よろしくね」
アルバイト先の、方々。
雪人さんは、トランスジェンダーと言う訳ではなく、女装が趣味だとか。
どちらかと言うと、あたしは、雪人さんと同じかな?
わたしの場合は、趣味って訳ではないけど、ね。
学校の校則で、やむなく、と、言うのが、建前。
でも、最近は。
女装してる方が、落ち着くし。
なんか、自分らしい気もしてたり、する。
制服もだけど、可愛らしいお洋服を着るのが、楽しいのもある。
まだまだ寒い、二月ではあるけれど。
ファッション界は、ひとつふたつ先の季節を先取り。
今日のアルバイトでは、春夏のファッションを纏っての、カタログ写真撮影。
こちらは、滞りなく、レイちゃんと、ふたり。
楽しみながらの、アルバイト。
そして。
やきもきするのは、やっぱり。
母さんの、こと。
あれから、どうなったのか。
聞くに聞けず。
結果が出たのか、出てないのか。
返答待ちなのか、一刀両断されたのか。
母さんを見てても、その雰囲気から察する事は困難で。
でも、なんとなく。
答えが出た訳ではなく、まだ、待機中、なのかな、と、推察。
もし、一刀両断にされてたらば。
うん。
なんとなく、気付く事になりそうな気は、するよね。
さて、そんな二月の日常も、終わりに近付いて。
非、日常的な、企画が。
始まります、よ?