第229話:校長先生から八時間目の面々への依頼
八時間目の特別教室。
二年のフロアの、空き教室。
東雲女子高等学校。
結構、古くからある学校らしく、その歴史たるや。
当然、時代と共に校舎の建て直しなんかも行われてたりして。
でも。
昨今の、少子化の、波。
子供が、入学生が、激減。
当初の人数を遥かに下回る。
故に。
教室が、余っている。
各学年のフロアに、八教室あるけど。
使われているのは、半分の、四教室。
廊下を挟んで、四教室づつが、並んでるんだけど。
片側しか、使われておらず。
反対側は、無人。
一部は、この八時間目のように、部活動の部室として使われている教室も、あるみたい。
ちなみに、各学年のフロアには、他にも特別教室が、ある。
美術室、被服家庭科室、書道室などの、特別教科用の、部屋。
水を使う理科室や調理家庭科室なんかは、一階。
そんな、校舎二階の、二年生のフロアの、空き教室のひとつ。
八時間目の、面々が集う、いつもの場所。
に。
校長先生と、教頭先生が。
「来年度……今年の受験生に関する事なのですが」
予想通り。
校長先生の語るお話の、内容は。
今年の、男子生徒の募集に関すること。
そのための設備を現在工事中であること。
「それってつまり、レイちゃんみたいな子を募集してるってこと?」
おさげ子先輩が、校長先生の話を要約。
「そのレイさんとやらの事は存じませんが、知り合いにそういう方が?」
あぁ、さすがにレイちゃんと校長先生たちは面識ないか。
「はい、他校の生徒ですが、園田さんの中学時代の友人の同級生で……」
と、逆に今度はエリ先生が校長先生に、説明。
「なるほど、その方は本物のトランスジェンダー女性なのですね」
ご納得の、校長先生。
しかし、本物、とは?
「でしたら、なおさら、ですね、校長先生」
さらに、教頭先生も。
「ええ、この子たちなら」
この子たち……あたしたちなら、何だとおっしゃいますやら?
って。
「ウチらなら、何なん、かなー?」
金髪子先輩が、校長先生にも、臆せず返す。
校長先生は、それに。
「はい。募集したトランスジェンダー女性が入学試験に合格した場合、みなさんに面接していただいて本物かどうか、見抜いていただければ、と」
ずばり、答える。
でも。
ぽかんとするみんなを代表して、ぱっつん子先輩が。
「本物? 見抜く? とは、一体?」
今度は、教頭先生が。
「はい、実は……」
おっしゃる、には。
なんでも、男子でありながら。
ほぼ女子高の、この、東雲女子に。
女性のフリをして。
よからぬ考えでもって、入学する人物も。
居なくは、無いかも、って不安もあるらしく。
でも。
ちょっとまって?
「先生、あたしはどうなんです?」
そう。
去年、あたしが入学した時は。
「はい、実は合格者は出ないと思っていたので、何も考えてませんでした」
ずばり。
校長先生も、もう、ぶっちゃけちゃってます、ね。
「だからこの『八時間目』とかでっちあげて他の生徒から隔離した、って感じかな?」
おさげ子先輩の、するどいツッコミ。
「はい、そうなりますね」
で。
「皆さんであれば、本物のトランスジェンダー女性か、やましい男性かどうか、見分けられるんじゃないか、と」
言うこと、らしいけど。
「ようは、レイちゃんとか真綾みたいな子かどうか判別すればいいって事かな」
「どうだろう?」
「実際に会って、話してみないと分かりませんわね……先生はいかがです?」
「どうだろう? 園田さんとレイさん以外会った事ないしねぇ」
はて、さて?