第225話:まさかの女子寮『園田』
それから、数日。
今。
あたしは。
あたしたちは。
また。
東雲女子高等学校の。
応接室に、居る。
校長先生、教頭先生、それから、二年の学年主任の、先生。
それに。
エリ先生、おさげ子先輩、金髪子先輩、ぱっつん子先輩。
それから。
あたし。
と。
母さん。
なにげに、何度目かの、応接室。
メンバーも、似たり寄ったりな、寄り合い?
そこで、エリ先生からの、進言? 申告? 懇願? 嘆願?
園田家に居候したい、と。
八時間目のメンバー全員で、と。
もちろん、と言うべきか?
それを聞いた教頭先生が。
「ダメに決まってるでしょう、そんなこと許可出来る訳ないじゃないですか」
快活、一刀両断。
すぱっ!
ですよねぇ。
最初から、ダメ元感も、大きく。
「男子生徒の自宅に女性教師や女子生徒がなんてしかも……」
教頭先生は、ちらり、と、母さんを見やり。
「不純異性交遊に関して前科のある人物の自宅ともな……」
「教頭先生」
言いかけた教頭先生を、校長先生が遮る。
「過去は過去。もう十五年以上前のお話でしょう。本人も海よりも深く反省して更生なさっていますから、今はそれは関係ありません」
逆に一刀両断、遮られた方の教頭先生は。
「ですが、校長……」
言葉を濁すばかり。
言いたい事は、わかるけど、校長先生のおっしゃる通り。
母さんも、ね。
「ふむ……ひとつ良い案を思い付いたのですが、結局、真綾さんの存在がひっかかってしまいそうですね……」
そりゃぁ、そうでしょうとも。
見かけや仕草は、自分でも驚くくらいに、女っぽくなったとは思うけど。
根本的な、根幹は、と、言えば。
覆すことのできない、大いなる、差異。
「ちなみに、参考までに、校長先生のその案をお聞きしてもよろしいですか?」
採用はされずとも。
校長先生の、アイディア。
教頭先生のみならず、みんなも興味あるだろうね。
あたしも、聞きたい。
「いえ、園田さんのお宅を女子寮として借り上げる、なんて言うのはどうかな、と思ったのですが」
ぉおっと。
「寮、ですか……」
「ええ。寮であればと思ったりもしましたが、真綾さんが居る限り、そもそもの問題が付いてまわりますしね」
ですよねぇ。
「沢田先生のご苦労も鑑みて、何かお役に立てれば、とは思うのですが」
「そうですね……降って湧いた災難、できれば、とは思いますが……」
校長先生も、教頭先生も。
無下には、と。
あたしの家に同居の線は、もう無いと言いつつ。
何か?
「寮と言えば、昔あった学生寮って、今、もう無いんですか?」
母さんの指摘に、校長先生が。
「ええ、十年程前に引き払ったんですよ。生徒数の激減で入寮者も少なくなって」
即答。
なるほど。
学生寮があって、部屋が空いていれば、先生に使ってもらえるかもだけど。
寮そのものが無いんじゃ、どうしようも、無い。
そして。
妙案も無く、皆が沈黙に入った。
かと、思えば。
「あのぉ、意見具申、よろしいでしょうか?」
あたしにはあまり馴染みのない、二年の学年主任の、先生。
エリ先生の、上司にあたる先生らしい。
「何かありますか? 田所先生」
さらにその上司にあたる、教頭先生。
「はい、現在使われていない宿直室なんてどうでしょう? 少し片付けすれば二、三か月なら寝泊まりには困らないかと思われます」
校長先生、そして、教頭先生が。
右手の拳を、左の手の平に、ポン、と。
「ソレですっ!」
「それがありましたかっ!」
ぉお?
なんか、いい案?
って、宿直室って、一体、何?