第215話:エリ先生の受難に八時間目一同
エリ先生の、ご自宅が、火事で被災。
お昼前くらいに連絡があって、現場に戻られたらしいけど。
自分のお家が燃えてて、それを消防隊が消火しているのを見てるしかないとか。
かなり痛い、よね。
直接的に身体への被害は無かったと、しても。
精神的にもきついし、体調にも影響あるだろう、ね。
それに。
「家が無くなっちゃったら、どこに寝泊まりするんだろう?」
素朴な、疑問を、誰とはなく投げてみたところ。
「ネットで調べてみたけどホテルとかに仮住まいできるみたい」
間髪を入れず、おさげ子先輩が答えてくれたら。
「大家さんとかが手配してくれるん?」
金髪子先輩が、追加の、質問。
「市? とか県? とかが手配してくれるんだって」
それにも、即座におさげ子先輩が答える。
けど。
エリ先生なら。
例の、大学時代のお友達……カナさんやルミさんの、それこそカナさんのマンションとかに泊めてもらっても良いかも?
とか、思ったりもするけど。
あたしが、あたし達が、とやかく言う話でも無いし。
言える立場でも、無いし。
火事も小火程度なら、いいんだけどな。
全焼とかだったら。
自宅にある物が、全て。
家電品とか、衣料品とか、替えが効くものなら、まだマシ。
自分で作った物なら、また作り直せたりするかもだけど。
もう二度と手に入らないような物とかだったら……。
ひぃ。
考えたら、本当に、恐ろしいわよね……。
とか、考えてたら。
「さて、今日、どうする?」
金髪子先輩。
「どうしよう、ね」
おさげ子先輩。
そう言えば、ぱっつん子先輩も今日はほとんど喋ってない、かな。
何やら思案中のような、ぱっつん子先輩に、金髪子先輩も。
「サクラは何かやりたい事、ある?」
そんな風に、声をかけてみている。
それに対して、ぱっつん子先輩は。
「いえ、エリ先生に、何かしてあげられることは無いものかと考えてるんですけど……」
八時間目の『仲間』として。
何かを。
でも。
「ウチらじゃ何の役にも立てないだろねー」
「うん、あれこれ聞く方が邪魔になると思うよ」
金髪子先輩と、おさげ子先輩のおっしゃる通り。
「あたしもそう思います」
何かしてあげられないか。
何か、したい。
けど。
「いえ、何か、何かあるはず、ですわ……きっと」
ぱっつん子先輩。
居ても立っても、って、ところ、かな。
そんなぱっつん子先輩に。
「うーん、どうかなぁ……」
「何かある、かな?」
そして、あたしも。
できる事が、あるのなら。
力になれる、なら。
何か。
何か……。
四人で考える。
けど、名案は浮かばず。
ただ、無駄に時間を過ごすだけになってしまっている。
そこへ。
「あ、まだ居た、よかった」
さっき、エリ先生の事を伝えに来てくれた、家庭科の先生が。
少し慌てた様子で、戻って来られた。
「どうしたの?」
すぐに反応する金髪子先輩に、先生は。
「エリちゃんから連絡が来たの」
お?
「なんて?」
「小坂さんのお洋服、貸して欲しいって」
「へ? 服? ウチの?」
「全焼しちゃったみたいで、ホテルは用意してもらえるらしいんだけど着替えも何も無くなっちゃったみたいで」
「うはぁ、なるほど」
こりゃ、本当に、一大事だ。