第203話:ミツキさんの貞操観念
「はいはーい、次、アタシアタシ」
え、なんで。
「ミツキが女装て」
女装中の山田おばさんも、キョトン。
その女装おばさんに後ろから抱き着いて、身体の前に回した手で。
「これよこれ、これ試してみたい」
もみもみ。
「ひゃわわっっ」
うん。直接的な刺激は無いけど、上げ底を伝わって、それなりの感触が地肌に響くのよね、それ……。
と、言うか。
恋人じゃなかったら、明らかセクハラだから、ね?
でも、ミツキさんの意図は、なんとなくわかった。
「ってことで、ケンゴは脱いで来て」
「あいよ」
「はーい」
あたしも。
「いこか、山田おばさん」
「おばさんゆーなし」
にしし、と、笑い見送るミツキさんと、残りの男子面々。
この、勢いや、もぅ、ね。
(山田は絶対尻に敷かれるパターン?)
(うむ、絶対感)
(オレは優しくてお淑やかな園田みたいな彼女がいいな……)
(やめろ若林、山田に彼女できたからライバルいなくなったとか思うんじゃないぞ)
うん。
聞こえてる、よ?
「真綾ちゃん行くよー」
あ。
後ろの男子の会話を気にしてたら。
レイちゃんに呼ばれてしまった。
「はいはーい」
お着換え書斎へ入って。
山田おばさんから、山田くんへ。
「ふぅ、苦しかった……」
お腹をベルトできゅーって、絞ってたしね。
初ブラなら、胸元も窮屈な感じしたろうし、ね。
「女の子のオシャレは我慢半分って言うしねー」
「そうなの?」
「知らんけど」
「知らんの、かーい」
などと、わいわい片付けてたら。
「ちょっと、もういい? 入るよー?」
「おぅ、ミツキいいぞ」
ちょうど上着まで着替え終えた彼氏の山田くん。
「おじゃまー」
部屋に来たミツキさんに。
「はい、これ」
件の、F90のブラジャーと、上げ底を手渡し。
「うんうん、これこれなにげにエロいよね先っぽの再現とかむふふ」
上げ底の先っぽつんつん、やめなさい。
「んもぉ、ミツキのエッチ。じゃあ、あたしたちは出てるから」
「菅原、オレらも行くぞ」
「はぁい」
ミツキさんをひとり残して、部屋を出ようとする、あたしたち三人。
「ちょっとまあやは残って着け方教えてよ」
「え?」
「え?」
「え?」
え? かける、三個。
「何言ってんだミツキ正気か?」
そら、彼氏はお怒りでしょう。
「えー、だって、着け方よくわかんないもーん」
「いやいや、いやいや」
うん。
それは、さすがに、ね?
「? 別にまあやに見られても恥ずかしくないけど?」
ミツキさーん!?
「オレがヤなんだよ、その、アレだ、ミツキのソレとか園田に見せるとか」
うんうん。
彼氏を、差し置いて。
標準装備の上げ底なんか、見る訳には、ね。
「うーん、そんなもん?」
「ミツキ、おまえな、忘れてるかもしれんが、こいつ、男だぞ」
「はっ!?」
「こいつ……」
完全に、忘れてましたよね? ミツキさん。
「うーん、しょうがないな……じゃあ、こうしよう」
ミツキさんの、ご提案。
部屋には、あたしと山田くんが、残る。
あたしは、着替えるミツキさんの質問に答える。
後ろを向いて、見ないようにして。
同じく、後ろを向いた山田くんが、あたしを見張る、と。
「それは別にいいんだが、オレが見ちゃうとか思わんの?」
「ケンゴに見られる分には問題無いっしょ?」
「いやいや、いやいや、お前なぁ……」
恐るべし。
女子の、貞操観念!?
ミツキさん独特?
まぁ、彼氏だし、大丈夫、なのか、な?