第180話:家族で過ごす大晦日~フライング金髪子
大晦日。
十二月の最終日、三十一日。
前日までに、お片付けやお買い物は、済ませて。
今日は、お料理が、メイン。
お婆ちゃんとお母さんのお料理。
おせち料理。
あたしも、お手伝い。
とは、言っても、メインはお婆ちゃん。
下ごしらえとかは、お母さん。
あたしは、出来上がったお料理を、重箱に盛り付け。
このあたりも、中学の頃から、毎年恒例。
お爺ちゃんは、畑仕事と、車の整備?
「お爺ちゃんって、本当に、車が好きみたいね」
盛り付けをしながら、何の気なしに、そんな事をつぶやいて、みたら。
料理をしながら、声だけで、お婆ちゃんが。
「そうなのよねぇ、若い頃から、ずぅっと」
そんな風に反応してくれる。
そんなお婆ちゃんに、今度はお母さんが、同じように手は留めず、声だけで。
「お母さんも、バイク好きよね?」
「ええ、まあ、ねぇ」
お母さんとお婆ちゃんの、母娘の、会話。
「車とバイク……もしかして、その縁で知り合った、とか?」
あ、聞いていいヤツだろうか?
お爺ちゃんと、お婆ちゃんの、馴れ初め?
「あぁ、うん、縁と言えば、縁、かしらねぇ……」
お婆ちゃん、言い淀む。
そりゃ、まあ、馴れ初めなんて、恥ずかしい、よね。
そしたら、突然。
「こいつがワシの車に突っ込んで来て、事故になったんじゃよ」
いつの間にか、お爺ちゃんが台所に襲撃。
こっそり話を聞いてらっしゃった?
「何言ってんのよ、あんたが信号無視して突っ込んで来たんでしょ」
お婆様、包丁を手に、急に振り向くのは、危ないです……。
「信号は青じゃった」
「いいえ、赤でした」
「青」
「あかっ!」
あ、これ。
マズいやつ?
「え、会ったのは、その時が、初めて?」
ナイス、母さん!
「そうじゃ。その事故の処理で色々あってなぁ……」
「ホント、この人、車オタクのクセに保険の事とか全然わかってなくてわたしが右往左往して……」
「なんだかんだ、なぁ」
「ねぇ……」
あら。
意外なところから。
恋の花咲く、事も、ある?
なんか、すごい、ね。
笑っちゃいけないんだろうけど。
「んふふ、なんか、可愛い……」
つい、ぼそっと。
口を突いて、出てしまう、感想。
「こら、真綾、爺ちゃんに向かって可愛いはないだろう。可愛いのは真綾じゃぁ」
ぎゃああ。
お爺様っ。ヘッドロックはやめてぇええ。
お婆ちゃんと母さん、笑ってないで、助けてぇえ。
なぁんて。
ほの、ぼの。
お婆ちゃんが、お爺ちゃんを追い払って(!?)
おせち料理は、完成。
お正月用の、お雑煮や、ぜんざいの仕込みも終わらせて。
大晦日の夕食は、年越しそば。
夜中に食べるのも身体によくないってこともあって。
夕食をおそばで済ませて。
あとはみんなで、くつろいでテレビを、見る。
ザ・日本の大晦日!
だよねぇ。
とりわけ、トリッキーな事をするでも、なく。
年越しの、深夜には。
家族で、近くの神社へ向かって。
除夜の鐘を聞きながら、年末の、お参り。
そして、年が明けた後に、再度、初詣を予定。
なんだけど。
年が変わる、少し前に。
『ぴこん』
と、端末から、通知音。
なんだ?
と、思って、見てみたらば。
『あけましておめでとーことしもおろしくー!』
金髪子先輩、フライング、です。