第176話:サービスエリアでご休憩
母さんの運転で、母さんの車で、母さんの実家へ向かう。
高速道路に乗って、ぴゅーん。
とは、行かず。
さすがに、年末の帰省ラッシュ。
渋滞。
渋く、滞り真っ最中。
今住んでいるところも、都会からは少し離れていて、地方に近い方面ながら。
母さんの実家は、そこから、さらに地方。
「ヒマねぇ……」
「うん、ヒマだねぇ……」
渋滞とは言え、それなりの速度では動いているので、気が抜けないところもありつつ。
時間が、かかる。
「そろそろ、次のサービスエリアあたりでお昼休憩しよっか」
「はあい」
朝ご飯は食べたけど、すでにお昼に近く。
「駐車場、空いてるかなぁ……」
そう。
母さんの言う通り。
この時期、帰省ラッシュで、高速道路上は言うに及ばず。
どこのサービスエリア、パーキングエリアも、混雑しきり。
しばらく走行して、パーキングエリアへと入ってみると。
「おぉっ、空いたっ」
たまたま、運よく。
目の前で出庫した車の後に、すっぽり。
「よかったー」
「うん、ラッキーだったね」
とりあえず、お手洗いお手洗い。
そう、お手洗い!
ふふふ。
今日は、その辺りも見越して。
男の子にも見えるような恰好。
デニムのパンツにセーターの上から、パーカー。
ウィッグは外して、少し伸びたけど、ちょっと髪の長い男の子風。
さらに、パンツとお揃いの、キャップ。
ふふふ。
でも。
男子トイレに入ろうとしたら。
すれ違った男性数人が、ぎょっとした表情をしてこっちを見てた。
あはは……。
なので、あえて!
個室ではない方で。
でも、少し奥まった方へ。
ささっと済ませて、車に戻るんだけど。
女性の方が、すごい列。
母さん、待ち時間が、大変そうだにゃ。
母さんの分も含めて、自動販売機で、温かいお茶を購入して。
車へと、戻る。
予備のキーを持たせてもらってるので。
車内で、待機。
エンジンはかかってないから、ちょっと冷えて来るけど。
まぁ、母さんが戻って来るまで。
待機。
あ。お弁当、出しておこう。
後部座席の荷物から、お弁当を取り出して。
あとは、母さんを待ちつつ、携帯端末で、この後の経路の混雑状況でも見ておきましょう、か。
うげぇ、混んでるなぁ、やっぱり。
特に、分岐の手前が、混んでるっぽい。
うむぅん。
毎度の事ながら。
帰省ラッシュ~。
まぁ、年末年始の風物詩と言えば、それまでだけど。
その景色の一部になる、とわ。
とわっ。
しくしく。
とか、やってたら。
「ただいまぁ」
母さんも、ご帰還。
「おかえり、大変だね」
「そぉよ、ホント、男の子がうらやましいわぁ」
「あはは」
「むぅ、こういう時だけ男の子に戻るんだから、ズルいー」
「えっへん」
母さんがエンジンをかけて、ヒーターも、オン。
温かさが戻ったところで。
「はい、お弁当」
「ありがと」
母さんと、ふたり。
車中でお弁当。
サービスエリアのお店も混雑してるのを、見越して。
お昼用のお弁当、持参。
そのお弁当も、てきぱきと食べ終えて。
「さぁて、後半戦、がんばって行きましょうかー」
「はぁい」
運転頑張るのは、母さん、だけど。
そういう意味では。
あたしも早く免許取って、運転できるようにした方がいい、かな?




