第166話:桃色の娘はぬいぐるみ
有無を言わさずに渡された、緑色の、衣装。
その衣装を持って、バスルームの脱衣所へ。
ここも、広い、デカい、豪勢。
広いんだから、広く使って、とも思うけど。
小市民? な、自分的には。
どうしても、隅っこの方でちまちま、と。
いったん、着ているものを脱ぎ、脱ぎ、下着姿になって。
先ずは、ブラウスから。
「うわ、これ、なんか、上げ底のパットが入ってる……」
なので、背中側にジッパーが付いてる。
前面の上げ底とパットの位置を合わせて、背中側のジッパーを。
ジッパーを。
ジッパーがぁあああああ。
留めにくいっ!
後ろ手に、四苦八苦しつつ、エリ先生を呼ぼうか、いっ瞬迷ったけど。
どうにか、自分で留める事ができた。
ほっ。
それから、スカートを履いて、ブラウスの裾をスカートの中に入れて。
ベルトを……ベルトも、後ろ留めだわぁ。
前面にハート型の物体が付いてるので、仕方ないか。
こっちは、まだ比較的簡単に留められた。
よかた……。
あとは、靴下と、手首に巻くブレスレット的な装飾品も着けて。
姿見があるので、そこで全身チェック。
少し歪んでいる部分を整えて。
あ。
そういえば、このキャラクターって、髪の色も緑だったような。
ウィッグは渡されてないし。
それ以前に、エリ先生もルミさんもカナさんも、色ウィッグは着けずに、地毛だったっけか。
まぁ、色髪は、それはそれで不自然なところもあるから。
作品のコスプレとしては中途半端だけど。
コスプレ衣装、と考えれば、これは、これで。
「よし」
一通りチェックして、脱衣場を出て、リビングへと戻ると。
リビングのソファに先生たちが座ってるんだけど。
もうひとり。
いや、もう『一体』の、人形と言うか、ぬいぐるみと言うか。
「あ、ピンクはぬいぐるみなんですね」
ひとり掛けソファに置かれたクッションの上に鎮座する、小さなぬいぐるみ。
同じようなピンク色の、衣装。
「うんうん。さすがに赤ちゃんコスプレは無理だからねー」
黄色の衣装のエリ先生の横が空いてるので、そこに座らせてもらう。
向かい側には、青と赤のルミさんとカナさん。
そう。
このコスプレの元のアニメ。
長く続くシリーズの日曜朝のアニメ。
まさに世代を超えて。
初期の頃の作品の主人公の女の子たちが成長して。
大人になって、子供が生まれて。
その子供たちが、新たな『敵』との闘いに巻き込まれて行く物語
母さんもリアルタイムで見ていた当時の、続編? にあたるお話らしく。
ただ、これまでのシリーズと違っているのは。
主人公の女の子たちの年齢が、バラバラ。
高校生、中学生、中学生、小学生。
そして、本来、主役であるはずの、桃色の娘が。
産まれて間もない、赤ん坊。
この赤ん坊が闘いに巻き込まれるのを避ける部分も、見どころの一つ。
ただ、主役の素養を醸し出す片鱗が随所にちりばめられ。
いつ、どこで、覚醒するのか?
それも、楽しみのひとつ。
が、故に。
今、ぬいぐるみとして作られている衣装は、まだアニメ作品上は、出てきていない。
そろそろ?
って、ウワサもちらほらで、想像図は、あちこちに出回っている、らしい。
それを元に、このぬいぐるみも作ったんだろうなぁ。
基本的には、あたし達が着ている衣装と、デザイン自体はほぼ、同じ。
ただ、主役だけに、他の色よりも、少し装飾が、派手。
さすが、エリ先生、かな。
エリ先生がコスプレーヤー、もしくはコスプレ衣装制作をしているのは。
これまで一緒に過ごして来た中で、バレバレだったし、ね。
裁縫が得意で、エプロンくらいちゃちゃっと作れたり。
布……生地屋さんに詳しかったり。
コスプレショップに通いなれてる感じだし。
アニメキャラのぬいぐるみ欲しがったり。
ぬいぐるみ自体も作れちゃったりしても。
おかしくは、無い無い。




