第144話:男装した女子先輩が女装した姿(なんだそれ)
二回目の、アルバイト。
ちなみに、雪人さんや雪枝さんから直接、ではなく。
学校経由で、アルバイトの要請。
なんだ、それ、って感じだけど、本来、アルバイトは禁止なので。
学校が依頼を受けて、それをあたしに回してくれるって手はず、かな。
おそらく、雪枝さんの会社で新しいスラックスタイプの制服を制作したりと、繋がりを作って、みたいな流れなんだろうことは推測に難くない。
でもまあ、おかげさまで。
久しぶりにレイちゃんと直接会って。
三か月ぶりのアルバイトは、前回とほぼ同じ要領で。
違っていたのは、例のゴスロリドレスが無いこと。
前回は、わりと特別な回とのことで。
今回は、普通のファッション。
冬・春もの。
今、十一月で、秋たけなわ、だけど。
この業界では、ひとつ先、ふたつ先の季節を、先どり。
そんな衣装をとっかえひっかえお着換えして、撮影。
雪人さんの指導も頂きつつ、ポージング。
いい感じで、仕事を終え、お給金も頂いて。
アルバイトの撮影自体は、無事、終了。
翌日、日曜日の、午後。
レイちゃん、それに先輩たちや先生と、待ち合わせ。
今日は、念願の、女性用の下着屋さんへ下着を買いに、れっつごー。
なのです。
目的の施設がある、隣駅で、集合。
「おぅ、レイちゃん、お久しぶりー」
金髪……子? 男? 先輩が。
「お久しぶりで……す?」
そりゃ、レイちゃんも引くわよね。
金髪先輩は、まだマシだけど。
「やぁやぁ、レイ君、おひさ」
「おぅ、レイ、久しぶりだ、ぜ」
おさげ先輩とぱっつん先輩は。
もはや、何ヤツ!?
状態。
がっちりとした体格に、不自然な、膨らみ。
それでいて、ガーリーな装いのスカートだったりパンツだったり。
髪型は女性型ではなく、あれ、これ、ウィッグ?
「先輩方、お疲れ様です……もしかして、ウィッグも用意されました?」
「おぅ、涼しくなったし、ウィッグにもチャレンジだぜー」
金髪先輩は、そのままでもよかった気もするけど。
同じような金髪の、ベリーショートなウィッグを装着されてる。
おさげ先輩も、ぱっつん先輩も男子風の、ウィッグ……。
おそらく、男装グッズを使って胸板とか肩幅を盛った状態で。
女装用? のグッズを重ね合わせて。
男装した女性が女装する。
いや。
もう。
えげつない、って、言っても、よいですか?
言えんけど。
胃炎になりそう……。
ちなみに。
先生も同行で、集合してるけど。
お腹を抱えて、涙を流しながら、笑い転げてらっしゃいます。
それもある意味、恥ずかしいから止めてほしいんですけど……。
人通りの多い駅前。
視線が、痛いです。
「あははは、さぁ、お買い物、行こっかー」
ひとしきり笑い終え、先生が音頭を取って、先導。
そして、別の意味で、お店に入りにくくなったような気もしなくは、無い。
レイちゃんと顔を見合わせて。
(聞いてないんだけど……)
(聞いてたけど、本当にやるとは思ってなかったよ……)
でも、まあ、このヒトたち、なら……って。
思うしか、ない、かなぁ……。
「さぁ、行こうぜ、お嬢さん方」
はいはい。
ぱっつん先輩にカモーンされて。
とぼとぼ。
ショップのある駅前ビルへ。
いざー。




