第143話:下着屋さんに下着を買いに行く予定
まだ、文化芸術祭は開催中で、もうそろそろ、終わりの時間。
クラスのお留守番も終わって、八時間目で使ってる教室で、先輩たちとエリ先生と、少しくつろぎ中。
それも、そろそろ、お終い、なんだけど。
その前に。
「えっと、先輩方、来週の週末、日曜って時間、あります?」
「空いてるけど、何?」
「何かあるのか?」
「またなんかイベントでもあるのか?」
「先生はご不要ですか?」
「えっと、ちょっと、買い物に付き合ってもらえないかなぁ、なんて」
「買い物? いいけど、何買いに行くん?」
「えぇっと、その、あの、ですね」
ちょっと言いづらい……。
「下着屋さんに、下着を買いに行きたくて、ですね……」
「へ?」
「いつも買いに行ってるんじゃないの?」
「てっきり、普通に買いに行ってると思ってたぞ?」
「いやぁ、実は、ですねぇ……」
そう。
同じ女装のお友達、レイちゃん。
菅原レイちゃんと、下着屋さんに下着を買いに行こう、って、行ったはいいんだけど。
お店の前まで行って、その迫力と言うか、色気と言うかに、負けてしまい。
女装男子ふたりで中に入る事が出来なかった、のです。
母さんと行った時はちゃんと入れたのになぁ。
レイちゃんが下着屋さんの雰囲気にビビッてしまって、あたしもそれにつられた感じ、かな。
「それで、来週の土曜日にはまたアルバイトがあるんで、次の日曜に買い物に行きたいなぁ、って、レイちゃんと話してて、ですね」
「なるほど、それで女子に同行してもらいたい、と?」
おさげ男先輩、話が早い。
「下着屋さんで下着買ったことないなぁ、オレっち」
「あぁ、ミリんちは、シズさんが買って来てくれるんだっけ?」
「そうそう、自分で買いに行ったこと、無いんだー」
「まぁ、サイズ合わせる必要性がかなり低いからな」
「そういうことー、って、どういう意味やーっ!」
わちゃわちゃ。
先輩たちの、下着屋さん談義。
「わかった、そういう事なら、いいぜ、付き合ってやるよ」
「ボクもいいよ」
「オレっちもー」
「はい、はい、先生も、先生も行くよー」
ひとりふたりでもよかったですが。
全員オッケーとは。
「ありがとうございます、じゃあ、時間とか集合場所はレイちゃんと相談して、グループメッセージで送りますね。多分、午後過ぎに隣駅になると思いますけど」
「おっけーおっけー」
「了解だ」
金髪男先輩とぱっつん男先輩は、即答のノリなんだけど。
おさげ男先輩が、また、思案顔からの。
「ふむ、そうか……男装した上に女装するってのも面白いかもしれないな……」
とんでも無い事を言い出した!?
「ちょっと待って下さい、なんですか、それ。女性が男装した上で女装するって……カオスすぎませんか?」
「いや、真綾が女装してる気分を味わう事ができるかな、って」
思わなくていいですよ、そんなこと……。
「思わなくていいですよ、そんなこと……」
あ。
また、考えてる事が、そのままクチから出ちゃった。
「なんか面白そうね、それも……だとしたら、先ずは女装ショップで、女装用のグッズを揃えないとだね」
せんせーー!?
先生の悪ふざけが、過ぎる件!
「じゃあ、真綾とレイちゃんがアルバイトしてる間に、女装ショップにゴーだな」
マジですか……。
「いやいや、ごめんなさい、普通に女子として付き合って欲しいんですけど?」
勘弁してください。
「いやいや、女装して女性用の下着屋さんに行くのに付き合うなら、女装して行くべきだろう」
すっ飛び理論っ!?
「それはまあ、そうかもしれないですけど……」
何かが、違う。
すべてが、違う、と、思うんだけど……。
エリ先生が、締めにかかる。
「よし、まぁ、とりあえずそういう事で、そろそろ終わりの時間だから、戻りましょう」
呼応して、三先輩も立ち上がって。
「ふむ、クラスに戻るか。またなー、真綾ぁ」
「ほい、じゃぁ、またな、真綾」
「真綾、先生、また明日、な」
「あ、お、お疲れ様です、また明日……」
「はいはい、真綾ちゃんも戻った戻った。先生もここカギかけて職員室戻るから」
そして、追い出されて。
とぼとぼ、と、自分のクラスへ戻って。
終礼、みたいな感じで、人員点呼の後、散開。
明日の朝、一時間目二時間目を使って、後片付け。
三時間目から通常授業に戻って。
二学期の、企画は、ほぼ終了。
あとは、二学期の期末テストを乗り越えれば、二学期も終了。
なんだけど。
下着屋さん企画は。
果たしてどうなる事やらー。